クモの糸量産 慶大発VB、車部品などに
微生物を活用
慶応大学発ベンチャーのスパイバー(山形県鶴岡市)は24日、クモの糸を人工合成し繊維にする技術を確立、量産に乗り出すと発表した。自動車部品メーカーの小島プレス工業(愛知県豊田市)と工場を新設、2013年中に月間100キロを供給できる体制を整える。クモ糸は強度が高く伸縮に優れる次世代素材とされる。自動車部品や医療素材向けなどに用途開拓を急ぐ。
スパイバーの人工クモ糸は微生物から出る特殊なたんぱく質を原料としている。成分や特性はクモの糸と同様だが、分子や遺伝子の配列を見直して他の素材などと組み合わせやすくしている。微生物も培養効率を高めており、紡糸を含め繊維にするまでの量産技術を開発した。

小島プレス工業と連携して約7億5千万円を投じ山形県鶴岡市に生産拠点を新設する。当初は年産1.2トンだが、用途開発を進め15年には年産10トンに能力を拡大する。
人工クモ糸による新素材は極めて高い強度があり、ナイロンより高い伸縮性を持つという。低コスト化を進め、自動車用部品、人工血管などの幅広い利用を見込む。

スパイバーは07年9月に設立。慶大先端生命科学研究所(鶴岡市)で学生だった関山和秀社長らがクモ糸の特性に注目し、新たなバイオ素材と位置づけて量産技術を開発してきた。海外でも研究機関を中心に実用化に向けた開発が進むものの、基礎研究の段階にとどまるという。スパイバーは既に関連技術を含めて16件の特許を出願している。
人工クモ糸を使った青色のドレスを公開した関山社長は「世界で初めての技術を立証でき、工業化が視野に入った」と説明した。
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