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ソニー、テレビ黒字化へ賭け 売れ筋の40型未満に大ナタ

 ソニーは11日、液晶テレビ「ブラビア」の新製品として、5機種10モデルを発表した。高精細映像の「4K」(3840×2160画素)パネル搭載機など高価格帯に注力する姿勢を明確にする一方、売れ筋である40型未満の製品は1モデルのみと大幅に絞り込んだ。平井一夫社長兼CEO(最高経営責任者)が悲願とする2013年度のテレビ事業の営業黒字回復へ向け大胆な施策を採った格好だが、販売機会の損失やブランド力の低下などリスクを伴う「賭け」でもある。

「固定コストとオペレーションコストの削減で、12年度のテレビ事業の営業赤字を11年度比で半減する目標を達成できる見通しとなった。13年度の黒字化に向け、渾身(こんしん)の思いを込めて商品力の強化に取り組んだ最新モデルをお見せする」――。11日に東京都内で開催された新製品発表会の冒頭、ソニーの今村昌志業務執行役員はテレビ事業の業績回復が順調に進んでいると力を込めて語った。今回の新製品では、4Kパネル搭載機を55型と65型にも広げたほか、表示可能な色調を広げる表示技術、出演者の声を明瞭に聞き取れるスピーカーなど、多彩な新技術を盛り込んだ。

30型台は1モデル、20型台はゼロ

一方で、ソニーの「選択と集中」がはっきり見て取れる変化もあった。今回の10モデルをサイズ別に分類すると、40型台が5モデルと最も多く、次いで50型台が3モデル、そしてハイエンドの60型台が1モデル。一方、売れ筋製品として例年数モデルを投入していた30型台は、32型が1モデルあるのみ。個室やワンルームマンションなどに向けた20型台に至ってはゼロで、発表資料やプレゼンでも一切触れられなかった。

ソニーは12年度まで、テレビ事業で9期連続の営業赤字を計上するのが確実な情勢にある。赤字続きの体質から脱却を図るべく同社は、韓国サムスン電子との合弁で展開していた液晶パネル生産会社「S-LCD」から出資を引き揚げたほか、不良在庫の発生を抑制すべくラインアップを絞り込む方針をかねて示していた。

 同社は例年、1~3月にブラビアの新製品を発表するのが通例となっている。そのモデル数は10年の23モデルをピークに、11年は16モデル、12年が13モデルと減少傾向にあるが、12年までは20~30型台も複数のモデルを展開していた。競合するシャープや東芝、パナソニックなどを含め、40型未満をここまで大幅に減らしたのは異例だ。

32型は「どんどん落ちている」、HDDやBD内蔵機も採算合わず

ソニーが40型未満に大ナタを振るった背景には、40型以上の大型テレビの市場拡大という変化が、ここ1年のテレビ市場で起こっているためだ。

経済産業省の生産動態統計によると、国内のテレビ販売金額に占める40型以上の比率は、11年秋までは3割台で推移していた。その後、11年の年末商戦から徐々に増え始め、ロンドン五輪が開催された12年夏は7割近くまで上昇。五輪終了後は若干落ち着いたものの、6割前後を維持している。

「小さいテレビに対するニーズはあるので、今後も32型のラインアップは必要。手を抜かずきちんと進化した製品を投入するが、ラインアップは薄くなっていくだろう」と語るのは、国内市場におけるブラビアの販売を統括するソニーマーケティングの本多健二統括部長(ホームエンタテインメントプロダクツマーケティング部)だ。

本多統括部長は40型未満の市場について「40型未満の領域で主力となっている32型の販売台数は、前年比で半減以下の勢いでどんどん落ちている。このレンジは購入者も『映りさえすればいいや』という考え方だし、タブレットをテレビの代用として使う動きも広がってくる。今後も販売台数が減少し、金額ベースではさらに下落幅が大きくなるだろう」と厳しい見方を示す。

同様の理由でブラビアのラインアップから姿を消したのが、ハードディスク(HDD)やブルーレイ(BD)を内蔵した一体型モデルだ。「ニーズはあるが、BDレコーダーの方が圧倒的に使いやすく、価格も手ごろになってきている。今回は整理させていただいた」(本多統括部長)。今回の新製品は、いずれも外付けHDDを接続して録画する機能を備えるものの、それ以上の豊富な録画機能は、たとえ盛り込んだところでBDレコーダーにかなわず、採算が取れないとの判断だ。

 リビングの中央に置かれる大型モデルに絞り込み、画質や音質にさらに磨きをかけるという「王道」で黒字化を目指すソニー。とはいえ、この戦略が奏功するかは未知数だ。

不良在庫は既に解消、むしろ機会損失の懸念も

アナログ放送が完全停波した11年7月以降、テレビの売れ行きは長らく低迷し、メーカーも小売店も在庫の山を抱え苦しんだ。仮にその状況が今も続いているならば、モデル数の絞り込みも有効だ。しかし実際には、メーカー各社が競うように生産調整と在庫処分を進めた結果、直近では薄型テレビの在庫が異常なまでに少なくなっているのだ。

生産動態統計によると、薄型テレビの国内在庫台数は直近の13年1月末で約11万台。直近のピークだった11年2月の約157万台に比べ1ケタ少ない。集計方式が変わっているため単純比較できないが、家電エコポイント半減前の駆け込み需要で店頭からテレビの在庫が払底した10年11月でさえ、テレビの在庫は約70万台もあった。各社の新製品が出そろう前の端境期という事情もあるが、家電量販店の店頭では従来モデルの在庫も底をつきつつある。ひところ各社の経営を圧迫した不良在庫の山はとうに解消しており、かえって販売機会の損失さえ懸念される水準だ。

大型のハイエンド機に特化する戦略の成否も予断を許さない。黒字化のカギを握る新製品の予想実売価格は、55型の4Kモデルで50万円、ハイビジョンモデルも28万~32万円と高め。この価格水準で堅調に売り上げを稼げればよいが、売り上げが思うように伸びなければ、値下げにより利益率が圧縮され、黒字化へのハードルがその分上がることも考えられる。50~60型台は家庭内での置き場所が限られることも懸念材料だ。

40型未満のモデルも、わずか1モデルでどこまでソニーの存在感を維持できるかは疑問が残る。40型未満は、金額ベースでは薄型テレビ全体の4割程度まで縮小したとはいえ、台数ベースでは依然3分の2を占める。40型未満を含むフルラインアップを維持する競合他社に対し、売れ筋モデルの競争から"脱落"したソニーがじり貧になる可能性もある。

今回の最大の特徴としている4Kも、対応の放送や映像ソフト、動画配信は現時点でほとんどなく、ニーズの掘り起こしもこれからだ。今村執行役員は「『もっといい音で』『もっときれいな映像で』など、購入者の潜在ニーズはまだ多くある」と強調し、従来のブラビアで採ってきた高付加価値路線の正当さを訴えるが、一歩間違えば販売不振から脱却できず、"変われないソニー"の象徴となってしまう危険もはらんでいる。

(電子報道部 金子寛人)

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