八ツ場ダム関連、地元の評価二分 来年度政府予算案
政府が29日に閣議決定した2013年度予算案は、群馬県の八ツ場ダムの本体関連事業費として12年度と同額の18億円(事業費ベース)を計上した。太田昭宏国土交通相がダムの早期完成に前向きな姿勢を示したことに地元は期待を寄せる一方、完成時期が依然として見えないことへの不満も漏れている。
八ツ場ダムには本体関連事業のほか、水没予定地の周辺に暮らす住民の生活再建事業を含めて97億5200万円を計上。道路の付け替え工事などがピークを越えたため、12年度に比べて約37億円減った。
本体関連事業には12年度予算でも同じ金額を計上していたが、事業着手の前提条件となる利根川水系の河川整備計画が未整備だったため、予算が執行されないまま宙に浮いていた。現時点でも今年度中の執行にメドが立っておらず、予算を新年度に事実上繰り越す格好だ。
13年度に予定される事業も、ダム本体に使用するコンクリート材料を生成するプラント設置のための土地整備など12年度と同じ。一方で本体の建設費は12年度予算の執行の遅れなどを理由に今回も盛り込まれなかった。太田国交相は「早期完成を目指す」とするが、具体的な着工時期が示されないことに地元の反応は複雑だ。
群馬県の大沢正明知事は「本体関連工事に一刻も早く着手し、早期にダムを完成させて欲しい」と早期着工に期待する。
これに対し、ダムの地元・長野原町の高山欣也町長は「本体工事が盛り込まれず期待はずれだ。完成が1年遅れれば、生活再建も1年遅くなる」と不満を隠さない。下流県も「予算の内容をよく見て対応を決める」(埼玉県)と戸惑い気味だ。
予算案の発表に合わせるように国交省関東地方整備局は同日、河川整備計画の原案を公表。利根川で大洪水が発生した場合に十分な治水能力を確保するため、八ツ場ダムの建設は必要だとの考えを改めて示した。
太田国交相は「(計画には)縛られるものではない」と強調するが、具体的な着工時期が示されないことに地元の懸念は強い。
一方、北関東3県のダム事業では霞ケ浦導水事業(茨城県)が12年度当初予算に比べて18%減の4億4900万円、思川開発事業(栃木県)には26%増の14億7200万円が計上された。