新潟市、震災がれきの試験焼却延期 岩手に返送へ
東日本大震災で発生した岩手県大槌町のがれき処理を巡り、新潟市は27日、同日予定していた試験焼却を延期した。がれきの搬入を阻止しようとする地元住民などの反発が強いため。会見した篠田昭市長は「混乱を避けいったん立ち止まり環境を整えていく」と話した。がれきは28日以降岩手県へ送り返す見通しとなった。
市が焼却施設「亀田清掃センター」へがれき搬入を予定した26日夜、地元住民らがトラックの進入を阻止。がれきを乗せたトラックは仮置き施設へ引き返した。これを受け篠田市長は27日に会見し「搬入の強行を避けて不測の事態が起きないようにした」と試験焼却の延期を表明した。
市内に仮置きしているがれきについては「(保管し続けるか送り返すかは)国や岩手県と協議していく」と述べるにとどめた。
ただ、市の幹部は28日以降に岩手県内へ送り返すことで調整を進めていると説明しており、住民の反対で被災地にがれきが戻る異例の事態となりそうだ。
篠田市長は今後も「データを示し粘り強く理解を求めていく」と試験焼却へ意欲を示した。時期については、衆院選を12月に控えていることを挙げ「(調整が必要で)年明けになると思う」との見通しを示した。
市ががれき搬入を試みた26日夜は、「がれき受け入れ中止を」などのプラカードを持った数十人が清掃センターの入り口を封鎖した。篠田市長は27日、金沢出張を取りやめて会見を開き延期を表明した。
がれき焼却の権限は市にあり、県内で受け入れを表明した5市のうち柏崎市などはすでに試験実施した。一方、放射性物質に関する安全性を疑問視する泉田裕彦知事は市側に懸念を示している。今月18日の柏崎市長選で現職に挑んだ対立候補を応援する一幕もあった。
篠田市長は県庁所在地のある新潟市の首長として、知事の意向に配慮しながら「議論を積み重ねてきた」という。ただ、想定外に強まった市民の反発に政令市が方針転換を迫られた形。泉田知事と篠田市長が共同で表明した「新潟州構想」など、地方自治の新たな枠組みにもきしみを招きそうだ。