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眠る資源列島 革命前夜

写真は語る

日本の陸や海で石油、ガスの探査や生産が熱を帯びている。地中や海底を深く掘り、資源を巧みに吸い上げる技術が進み、これまで眠っていた"鉱脈"にも手が届きつつあるからだ。国産資源は日本の新しい成長物語を紡ぐのだろうか。

石油資源開発の片貝ガス田探掘井から出た天然ガスの炎。「ゴーッ」という大きな燃焼音が響く。炎は高さ約10メートルにもなり、近づくと気温が40度を超えた(新潟県小千谷市)
片貝ガス田探掘井を掘った高さ約60メートルで国内最大級の陸上掘削装置。50人の作業員が24時間体制で深さ4900メートルまで掘削を続けた(新潟県小千谷市)
鮎川油ガス田では新型原油「シェールオイル」が採取された。米国では掘削技術の普及でシェールオイルの生産が本格化しているが、日本での採取は初めて(秋田県由利本荘市)
シェールオイルがあることが確認された女川層の地表部分。秋田県には秋田市内の都市ガス需要の大半を県産出ガスで賄えるほど、油ガスを豊かに含んだ地層が多い(秋田県由利本荘市)
採取され、遠心分離した「シェールオイル」(手前)と女川層のコアサンプル。石油資源開発秋田鉱業所の井上圭典所長は「油を見られてほっとしている」と話す(秋田県由利本荘市)
4台の隊列を組んで強い振動を起こし、地下構造を調べる起振車。石油資源開発が男鹿半島で石油試掘用の井戸をどこに掘るのか調査している(秋田県男鹿市)
道路は起振車、山林はダイナマイト、海上は特殊船で振動波を起こし、地中からはね返ってきた受信波を集計してコンピューターで地層を描く。今年度中にデータ収集を終えて来年度以降、試掘場所を絞り込む(秋田県男鹿市)

3日朝、秋田杉と棚田に囲まれた「鮎川油ガス田」(秋田県由利本荘市)は国内初の新型原油「シェールオイル」の採取に沸いた。資源開発大手の石油資源開発は、地下1800メートルほどの硬い岩盤層に塩酸などを注入。岩を溶かし、割れ目から原油分を含む液体を回収した。採取コストなど商業生産までにクリアすべき課題はあるが、秋田県周辺だけで日本の年間石油消費量の1割弱のシェールオイルが眠るとの指摘もある。

シェールと呼ばれる頁岩(けつがん)層から原油やガスを取り出すことに成功した米国では、国内のガス価格が下がり、企業が生産拠点を国内に戻すなど経済全体の姿が様変わりしつつある。日本版「革命」への期待は膨らむ。

石油資源開発は既存の油ガス田でも新たな井戸を掘り生産増に力を入れる。先月14日には新潟県小千谷市の片貝ガス田で4年ぶりの掘削に成功。「ゴーッ」という耳をつんざく燃焼音とともに探掘井から噴き出る10メートルの炎は圧巻だ。同社は今年度、国内での探鉱に前年度比8割増の96億円を投じる。

国内での資源探査は、陸から海にも広がる。新潟の佐渡沖では国がJX日鉱日石開発など民間企業と連携して海底油田の探査に乗り出す。佐渡南西沖30キロメートルにある上越海丘は面積が山手線内側の約2倍に匹敵し、中東の中規模油田並みの大きさ。来春の試掘で石油の十分な埋蔵が確認できれば商業生産も視野に入る。

産業技術総合研究所メタンハイドレート研究センターに保管されているメタンハイドレート層から採取したコアサンプル。静岡―和歌山県沖で今年の6月から7月に採取した(札幌市豊平区)
人工のメタンハイドレートが燃える様子(右)と液体窒素で冷却保存されているメタンハイドレートを含む砂質堆積層(左)。今年2月に石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)らがメタンハイドレートの海洋掘削を始めた。来年1月には産出試験を予定している。成田英夫センター長は「課題は多いが、高い値段を払って外国からガスを買う状況を変えたい」と話す
今年就航した海洋資源調査船「白嶺」。従来の調査船より海底深く掘ることができ、荒れた海の上でも船体中央部に立つ約40メートルのドリルを水深2000メートルの海底にピンポイントで突き刺せる(山口県下関市の三菱重工業下関造船所)
4月からはJOGMECが沖縄本島の北西沖で海底熱水鉱床の掘削調査をしている。12年度末までに資源量を正確に把握する予定だ(山口県下関市)
国内で唯一、海上にある岩船沖油ガス田。日本海洋石油資源開発らが操業し、新潟県胎内市荒井浜の沖合約4キロに位置する。国は13年度から同じ新潟県内の佐渡南西沖30キロメートルにある「上越海丘」で試掘に乗り出す

太平洋沖では「燃える氷」と呼ばれる天然ガスの一種、メタンハイドレートの開発が進む。すでに静岡~和歌山県沖の海底約300メートルから試料地質を採取済みで、来年には本格的な産出試験に入る。同調査海域だけで日本の天然ガス輸入量およそ11年分のメタンガス埋蔵が見込まれる。

こうした探査や生産の強化が4%弱の日本のエネルギー自給率を一変させるわけではない。だが技術進化は将来のエネルギー事情を変える潜在力を秘める。片貝町のガス採掘では井戸を地中で枝分かれさせる技術を活用。佐渡沖で石油がたまりやすい海底地層を突き止めたのは新型探査船の3次元画像解析機だ。静岡~和歌山県沖のメタンガス採掘には海底の気圧を変えてガスを吸い上げる「減圧法」という採取法を用いる。進化する技術が国産資源のフロンティアを広げようとしている。

文 野見山祐史

写真 今井拓也

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