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原発廃棄物、処分法に新提言

東工大の今田教授に聞く

編集委員 滝 順一

今田高俊・東京工業大学大学院教授

日本学術会議の委員会は原子力発電で生じる高レベル放射性廃棄物の処分について「総量管理」「暫定保管」など新しい考え方を盛り込んだ提言を公表した。これまでの政府の最終処分の方針を見直すよう求めている。委員長を務めた今田高俊・東京工業大学大学院教授(社会システム論)に提言の内容などを聞いた。

――提言で取り上げた高レベル廃棄物は使用済み燃料と、使用済み燃料の再処理で生じる高レベル廃棄物の両方を含んでいます。その総量管理とは何を意味しますか?

「廃棄物は私たちが原子力を利用した証しだと言える。廃棄物を見れば、これまでの私たちがいかに原子力に依存してきたかわかる。これからどこまで依存していくのか、毎日増えていくので、いわば(依存度を知る)バロメーターだと言える」

「原子力をどうしていくか。廃棄物の量で管理する発想が現実的だ。どこまで許容できるかの大枠を決めて、枠内で廃棄物を管理していくことこそがエネルギー政策の中核ではないか。管理の仕方は2つ。上限を決めるか、増分を抑制するかだ。前者なら脱原発、後者の場合は原発を維持するにしてもどの程度の規模で維持するのかを決める。原発に反対であろうと推進であろうと、イデオロギーにかかわらず、考えなくてはいけない」

――数十~数百年の「暫定保管」という考え方はなじみがなく公表後に議論を呼んでいます。

「これまで政府が進めてきた最終処分は地下300メートルより深い地層に埋めるものだが、委員会ではそれは無理だとの考え方をとった。地震学者らからのヒアリングによれば、地震や火山活動が活発な日本で万年単位で地層が安定していると予測はできないという。これは科学的知識の限界だ。地下に埋めてふたを閉めてしまった後に、もし断層が動いたらお手上げになる」

――既存の最終処分では、仮に地殻活動で廃棄物を収めた容器から廃液などが漏れても、人間が居住する環境に届くまで非常に長い時間がかかるので、事実上影響はないとの考え方にも立っているはずです。

「その考え方は甘い。地下深くの微生物に放射線が作用してその微生物を取り込んだ別の生物が地上に出てくるなど、人間界に及ぶ可能性はいろいろ想定できる。また人間のエゴで環境を汚していいのかという問題もある。そこまでのリスクを背負ってまで地層処分にこだわる必要はない」

「現在行われている中間貯蔵は30~50年間、使用済み燃料を冷やしつつ地上に保管するものだが、これもそのまま長期間置きっぱなしとはいかない。テロへの心配もある。地中に保管して何かあったときに取り出して別のところに移せるようにするのがよいと考えた。それが暫定保管だ。実行するには廃棄物を入れる場所と、もしもの時に移すための空っぽの保管場所の2つの施設が少なくとも要る。取り出し可能にすることで、万年単位埋めたままよりリスクは少なくなる。

「また数百年間に科学技術の革新が試みられるだろう。原子力維持の立場からは、廃棄物量を減らすため原子炉における核燃料の燃焼度をあげ、核燃料サイクルを利用することが選択肢の一つになりうる。脱原発の観点からは、再生可能エネルギーへの転換で原発依存度を下げるのも道だ。また廃棄物の放射能が減衰する半減期を短くする核変換技術といったものもモラトリアム期間中に頑張って実用化できるかもしれない」

――暫定保管場所がずるずると最終処分になるのではないかとの心配もある。

「地域の住民、自治体ときちんと契約し、取り出して移す際の条件を明記する必要がある。また保管に信頼をもってもらうため政府や電力会社の機能一部を移転し、大型の研究施設やデータセンターを保管場所の近隣につくり雇用を生み生活基盤をつくることも、住民に安心してもらうには大事だ」

「これは私個人の考えだが、大きな施設を日本に一つつくるより、電力会社ごとに保管場所を設けるのが望ましい。そうすれば空き施設が常に9カ所あり柔軟な運用ができる」

――数百年は人の一生の何倍かになり、最終処分と事実上、大差ないようにも受け取れます。

「最終処分してふたを閉めてしまったら、その後にもし火山活動や地震でしみ出したらどうするのか。こういう心配は素人考えかもしれないが多くの住民が抱くだろうし、それを専門家が説明しても納得させることは難しい。万が一に移せるならともかく、ふたをしてしまうことに抵抗感がある」

「廃棄物問題は遠からず世界規模の問題になる。世界中で原発を建てており大変な量の廃棄物が発生する。米国も使用済み燃料の処分場所として考えてきたユッカマウンテン(ネバダ州)の計画が行き詰まっている。地球上のどこかに適地を探し、いい場所があればそこに埋めたいと考えている。一国では対処しきれず、50年もたてば核戦争より廃棄物問題が国連安全保障理事会の重要議題になるのではないか。そうなるときまで保管する意味はある」

 ■取材を終えて
 「国民的議論を喚起し、原発反対か推進かに二分されている議論を同じテーブルに着けるようにしたい」とも今田教授は話す。廃棄物処分の問題は賛成・反対にかかわらず逃げられない課題で、意見対立を超えて原子力政策を議論する端緒となると考えている。総量管理というアイデアはまさにそこを目的としている。
 これまで原子力にかかわる工学分野の研究者が中心に議論し政策がつくられてきた。学術会議の委員会には人文社会系の科学者が参加し委員長も社会学者が務めた。「人文社会学者にまとめられるか」との声もあったようで、とりまとめには苦労されたようだ。
 暫定管理でコンセンサスが得られるかは疑問だ。暫定と言っても数百年は長い。空の施設も同時に用意して万が一には移すというのは合理的だが、それで納得が得られるのかどうかわからない。ともあれ注目すべき提案であり政府や電力会社はしっかり受け止める必要がある。

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