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「るるぶ」とスマホアプリが連動、画像認識で観光情報に直リンク

2次元バーコード不要、画像をキーにクラウドで照合

JTBパブリッシング(東京・新宿)は10日、観光地の詳細情報を紹介するスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)アプリ「るるぶ」に画像認識技術を応用した新機能を追加した。既にiPhone版とアンドロイド版を合わせて100万弱がダウンロードされている同アプリは、累計発行部数4億部を超える旅行情報誌「るるぶ」と情報サイト「るるぶ.com」を連携させる役割を担う。

「るるぶ」アプリを起動し、右上の「誌面連動」ボタンで誌面を撮影する

ユーザーが誌面を撮影すると、アプリが誌面に掲載されているレストランや観光名所などの画像を解析。その結果を基に「るるぶ.com」にアクセスし、誌面には掲載されていない写真や所在地、他のユーザーの口コミなどをスマホ画面に表示する。1クリックで地図を呼び出したり、表示されたページから直接レストランなどに電話をすることもできる。13日に発売する「るるぶ西宮市」(5万2000部)から対応を始める。

同サービスは、デンソー子会社のデンソーアイティーラボラトリ(東京・渋谷)が独自に開発した画像認識技術「CARD(コンパクト・アンド・リアルタイム・ディスクリプター)」を活用する。

まず誌面の画像データをあらかじめクラウドサーバーに格納しておく。ユーザーがスマホアプリで「るるぶ」の誌面を撮影すると、誌面イメージがクラウドサーバーに送られ、色や写り込んでいる物体の数、角度などを「特徴点」として数値化。格納されている画像の特徴点と高速で照合する。一致する画像を見つけたら、この画像にひもづいた店舗や観光名所の一覧をデータベースから抽出してスマホ画面に表示する。ユーザーが一覧から興味のある場所を選択すると、JTBパブリッシングの情報サイト「るるぶ.com」内の詳細ページが表示される。

画像認識技術「CARD」で「るるぶ」を撮影した画像。緑の線が一致した「特徴点」

デンソーアイティーラボラトリは今回、JTBパブリッシングに提供した要素技術をiPhoneアプリ「CARDesc」で公開している。試しに、発売済みの「るるぶ京都」を撮影してみたところ、1ページで1000前後の特徴点が検出された(左の画像を参照)。白く光っているのが特徴点で、照合の結果一致した点が緑の線でつながれている。

2つの画像の同一性を判断する際には、特徴点を1つずつ照合するが、その際には各点を特徴点が持つベクトルの距離を計算して照合する。しかし特徴点が多い複雑な画像ほど計算量が膨大になりデータ容量が増加、照合にも時間がかかるという難点があった。

デンソーアイティーラボラトリはこれら特徴点をバイナリ(2進数)データで定義。特徴点を導くための計算にかかるデータ量を30分の1程度まで減らすことに成功した。

バイナリ化は照合処理の高速化、データ量の軽量化にもつながる。条件によって左右されるものの、数百枚の画像の中から一致する画像を検索するのにかかる時間は500ミリ秒程度。計算に必要とするサーバー内のメモリー使用量も、画像100枚で500キロバイトほどだという。

サービス価格を抑えることにもつながった。画像認識技術は、メーカーや印刷会社などがこぞって開発に取り組んでいる。例えばNECは立体画像認識技術「GAZIRU(ガジル)」の提供を6月1日から開始。同技術を使った画像認証システムの利用料は月額48万円からで、年額換算で600万円弱になる。共同印刷の「ぱとりしあ」は、画像照合時にクラウドサーバーにアクセスせず、アプリ内で動作を完結する「ローカル版」で月額25万円から。年額300万円で利用できる計算だが、認識できる画像の上限は100枚までと制限がある。

デンソーアイティーラボラトリの画像認識技術は、アプリごとにライセンス使用料を課金する。利用条件によって異なるものの、年間100万円台から利用可能という。

画像データをクラウドサーバーに格納したことで、ユーザーの初期費用を抑えられ、拡張性も高めることができた。1アプリあたりの画像認識枚数を増やすごとに、追加料金が発生することもない。

シニアエンジニアの吉田悠一氏らが開発した

「紙を含む『実体』が世の中からなくなることはない」(デンソーアイティーラボラトリ研究開発グループシニアエンジニアの吉田悠一氏)。例えば映画のポスター画像からプロモーションサイトへ誘導し予告編を流す、お菓子の箱やテレビコマーシャルの画像からECサイトに誘導し、商品を直接買えるようにするなど、今後様々な活用方法が考えられる。

読者の「紙離れ」を防ごうと、様々な紙媒体がインターネットとの連動を模索している。中でも旅先で開く情報誌は情報が整理されていることが重要で、量が多ければ良いというものではない。JTBパブリッシングも、「るるぶ」誌面にサイトのURLが入った2次元バーコードを埋め込み、誌面の見やすさを保ったまま、読者がより多くの情報にアクセスできるよう試みてきた。

しかし2次元バーコードは作り手があらかじめ誌面に埋め込まなければならないうえ、テキストデータしか埋め込むことができないという制約がある。携帯端末の機能によっては、ユーザーが読み込みに失敗することも多かった。全地球測位システム(GPS)機能などがない従来型携帯電話では機能的な限界もあった。爆発的に広まったスマホ上で画像認識技術を活用すれば、紙とパソコン向け情報サイトの枠を超えた情報提供が可能になる。

例えば誌面では10位までしか載せられない「人気スイーツランキング」でも、画像認識アプリからサイトに誘導すれば、ユーザーが検索の手間をかけなくても50位まで紹介できる。「編集者の自己満足ではなく、機能面で読者に満足してもらえるように表現に広がりを持たせていきたい」(JTBパブリッシングソリューション事業本部・企画制作部の武内夏子氏)。

(電子報道部 富谷瑠美)

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