阪大、細胞分裂の再現に一部成功 人工細胞に道
大阪大学の四方哲也教授や鈴木宏明准教授らが、細胞分裂を人工的に再現することに一部成功した。遺伝子がなくても一定の条件がそろうと分裂した。遺伝子の複製技術と組み合わせれば、生物を構成する細胞を一から作る「人工細胞」が実現するかもしれない。
論文が米科学アカデミー紀要(電子版)に3日、掲載される。
細胞にも存在するリン脂質の膜で直径約10マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルの粒子を水溶液中に作り、その中に高分子を入れた。電気で刺激すると、粒子同士がくっついて、成長した細胞のように1つになる。その数十秒後には、分裂して元の大きさの粒子に分かれた。
分裂の条件は高分子の大きさや量、粒子の形で決まる。結合の前後で粒子を作る物質の量や体積は一定のため、粒子の形は球ではなく円盤や円筒になる。内部の高分子がより動きやすい形になるような力が働き、粒子が分裂する。
四方教授は「生物が遺伝子をもとに細胞分裂するようになったのは、進化が起きた後。原始の細胞は脂質膜の粒子の中で高分子が増えてたまり、粒子の変形をきっかけに分裂したのではないか」と話している。