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消費税、政治を翻弄し続けた30年 挑戦・惨敗…

消費増税関連法案の国会提出に向けた政府・与党内の調整が大詰めを迎えている。増税慎重派は「行革・政治改革が不十分」「増税は景気に悪影響を与える」などと反発。野党は民主党がマニフェスト(政権公約)に消費増税を明記しなかったことを「だまし討ちだ」と批判する。消費税を巡る議論は30年来、同じような論点を巡って戦わされ、政局と絡み合ってきた。(恩地洋介)

「歳出削減が先」

政界で消費税(付加価値税)が話題に上ったのは1970年。欧州の税制視察から帰国した自民党の水田三喜男政調会長は「国民生活向上のための財源として間接税導入は必要だ」と語った。高度成長が終われば、直接税所得税収に頼る歳入構造は限界を迎えるという問題意識があった。

具体的な議論が始まったのはそれから約10年後だった。大平正芳首相が79年1月、一般消費税の80年度からの導入準備を閣議決定すると、野党はこぞって反対した。小売業者や消費者団体の反発を受け、自民党内でも慎重論が台頭。同党から200人以上が参加した財政再建議員懇談会は増税の前提として「歳出の無駄の見直し」を掲げ、導入は時期尚早と訴えた。

79年10月の衆院選の直前、日本鉄道建設公団のカラ出張問題など政府機関の大規模な不正経理問題も明らかになった。各方面から集中砲火を浴びた大平首相は選挙戦のさなか、増税を断念した。

「公約に違反」

政府はその後「増税によらない財政再建」を掲げた。マイナス・シーリングによる厳しい歳出抑制や、国鉄、電電公社、専売公社などの民営化を掲げた中曽根康弘首相が売上税法案を手掛けることができたのは、政権の終盤に入ってからだった。

慎重に準備を進めた中曽根首相は「公約違反」という批判に足をすくわれた。86年7月の衆参同日選の前、記者会見で「多段階、普遍的、網羅的で投網をかけるような大型間接税はとらない」と発言。同日選で圧勝した後に売上税導入を打ち出し、猛反発を浴びた。

87年3月の参院岩手補選で自民党候補が売上税反対を掲げた社会党候補に敗北。4月の統一地方選でも自民党退潮が鮮明になり、売上税法案は廃案となった。

消費税を導入できたのは竹下内閣の89年4月。大平首相の失敗から10年の歳月を要した。

「トラウマ」はまだある。97年に税率を3%から5%に引き上げた後の景気後退だ。山一証券破綻などの金融システム不安や、アジア通貨危機など複合的な要因が背景との見方が一般的だが、野党は「失政」と攻撃した。その後、増税に二の足を踏ませる生々しい記憶となっている。

一貫性欠く政党

野田佳彦首相が今、消費増税関連法案を提出する根拠とするのは麻生内閣で成立した改正所得税法。「2011年度までに必要な法制上の措置を講ずる」とした改正法付則は、自民党内の議論の末に「経済状況の好転を前提」との表現を盛り込んでいる。

各党の主張の一貫性のなさも目立つ。非自民8党・会派が連立した細川内閣が94年に税率7%の国民福祉税を導入する構想を打ち出して失敗した9カ月後、消費税率を3%から5%に引き上げると決めたのは自民、社会、新党さきがけ3党連立の村山内閣だった。消費税反対の急先鋒(せんぽう)だった社会党が税率引き上げを認めた一方、国民福祉税構想を主導した新生党の小沢一郎代表幹事らは引き上げ凍結を主張した。

野田政権では与野党が非難しあっているが、各党の立場のわかりにくさが混迷に拍車をかけている。

欧州、20%前後の国多く 軽減税率で低所得者に配慮

欧州では日本の消費税に相当する付加価値税の税率が20%前後の国が多い。英国では2008年のリーマン・ショック後の経済対策で下げた税率を再び引き上げるなど、機動的な財政運営をしている。日本で消費税導入後の20年余りの増税幅が2%と小さいのは、税制構造や生活環境が影響しているとの見方がある。

付加価値税はフランスが1954年に導入、その後、制度を簡素化して今の仕組みになった。92年のEC(欧州共同体)指令は加盟国に付加価値税を15%以上にするよう求めており、ドイツなどは間接税収が6割近くに達する。

日本は49年のシャウプ勧告が戦後税制の基礎となった。所得税法人税などの直接税が中心で、富の再分配によって国民の所得格差を縮める狙いがあった。

所得課税と比べ、商品やサービス提供などの取引に課税する消費税の仕組みは分かりにくい。中央大の森信茂樹教授は「日本は消費税導入を試みた際に、制度や必要性について国民の理解を得ることに失敗した」と指摘する。

欧州では食料品などへの軽減税率が確立していることも批判を抑える方向に働いている。低所得者の負担が大きくなる逆進性が問われる余地が小さいからだ。

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