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空き家修繕・解体求める条例広がる 放置で倒壊・放火懸念

古い空き家が放置され、倒壊や放火を懸念する声が相次いでいる。東京都足立区、埼玉県所沢市などが相次いで所有者に修繕・解体を求める条例を制定した。空き家問題というと地方のイメージが強いが、首都圏でも空き家が増えており、看過できない問題になってきた。

最大100万円助成

足立区では老朽家屋2軒を解体した

足立区の木造住宅密集地域で町工場の解体工事が進んでいる。今月中にも更地になる。同区は昨年11月、都内で初めて、老朽化家屋に解体や改修を義務付ける条例を制定。解体した場合は所有者に最大100万円を助成する。条例に基づき、すでに2軒を解体した。

ここまでするのは理由がある。2010年3月、老朽化した建物の外壁の一部が歩道に落下した。幸いケガ人は出なかったが「何かが起こってからでは遅い」(都市建設部)と条例化に踏み切った。区によると、区内で倒壊などの恐れがある建物は1743軒。うち57棟は特に危険度が高いという。この57軒について、1つずつ登記簿や周辺の住民への聞き取りで所有者を割り出し、順次解体を要請している。

空き家対策の条例のさきがけといえるのが所沢市だ。10年10月に施行した。市西部の住宅街の一角で、ひときわ老朽化した建物が目に飛び込んでくる。かつては木が伸びて草が生い茂り、トタン屋根の中央部分は劣化して外れ、風が吹くとパタンパタンと音を立てていた。

「空き家では屋根が壊れて苦情が来るケースが多い」。所沢市の前田広子防犯対策室長はこう話す。この空き家では苦情を受け、現地の状況を確認。登記簿などで家の所有者を調べて指導書を郵送した。何度かの電話でのやりとりの後、所有者に木を切ってもらうことに成功。「次は屋根もお願いしますね」。昨年12月には屋根の修繕も完了した。隣人も「音がしなくなった」と感謝している。

条例施行前も住民からの苦情・相談を受け、市の職員が修繕などの対応を要請していたが、解決に至ったのは半分以下だった。「条例化したことで所有者の意識が変わった」(前田室長)。施行からの1年2カ月で105件の苦情・相談があり、62%が解決した。

5年で20万戸増

空き家問題は人口減少が深刻な地方の問題と思われがちだが、首都圏でも大きな問題になっている。高齢化が進み、一人暮らしの高齢者が増えているが、狭くて古い家は親が死んだ後に子供が継がないケースも多い。総務省によると、08年10月時点の首都圏の1都3県の空き家は185万戸にのぼる。5年間で20万戸(12%)増えた。古い空き家は景観悪化や悪臭の原因になるほか、防災、防犯上の問題も指摘され、自治体は対策を迫られている。

相模原市は10年10月に部署横断の「空き家・空き地対策調整会議」を設置。12年度中に空き家対策の具体的な指針を作る方針だ。「他市の取り組みなどをにらみながら条例制定も模索していきたい」(企画政策課)

議会主導で条例を制定した例もある。千葉県柏市では町内会が対策を求める請願書をまとめたのを受け、市議が昨年5月に条例案を提出した。9月の施行から64件の相談を受け、18件を解決。施行前と比べ「相談件数は2倍になった」(防災安全課)。

課題は強制力の乏しさだ。多くの場合、罰則を設けておらず、対応しなかった所有者の公表にとどまる。4月に条例を施行する千葉県松戸市のように「最終手段として代執行を検討することもある」という自治体もあるが、実施は難しいといわれる。空き家問題に詳しい上智大学の北村喜宣教授は「代執行しても跡地をどうするかなどの問題がある」と指摘する。独居高齢者対策、放置住宅の有効活用策など、そもそも空き家を増やさないための総合的な政策が重要になりそうだ。

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