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団塊の活力呼び込め 人口移動の新潮流(5)

地域再生 震災が問う

北海道十勝平野の太平洋沿岸にある豊頃町。広大な畑のそばで、ログハウス風の住宅2棟が建築中だ。移住希望者に田舎暮らしを試してもらう町営の「体験住宅」だ。ターゲットは団塊世代の夫婦。3月に2組を募集し、4月に入居の予定だ。町職員の中川直幸さん(50)は「体験住宅で農業をしながら暮らし、気に入れば町に家を建ててもらうなどして定住を勧める」と狙いを語る。

蓄え・余裕に着目

北海道豊頃町が移住者向けに建設するログハウス風住宅

町の人口は3539人と7年前に比べ12%減った。若い世代の移住が理想だが、紹介できる仕事は乏しい。そこで、「蓄えや時間に余裕のある退職者を呼び、農家との交流を通じて町を活気づけたい」(中川さん)と考え、対象を団塊世代に絞った。体験住宅の入居料金は月額5万円から。期間は最長1年。ジャガイモや枝豆を作れる家庭菜園付きだ。

約660万人の団塊の世代(1947~49年生まれ)が2012年から65歳に達し始め、企業に勤めている人の退職が本格化する。三菱総合研究所が60歳以上の全国4640人に住み替え意識について調査したところ、団塊世代の2割が「健康なうちに住み替えをしたい」と回答した。退職を機に団塊世代に移住を促す自治体の取り組みも活発になってきた。

愛知県の東三河地域の8市町村などでつくる東三河広域協議会は、移住希望者に養殖漁業などの無料体験事業を実施している。「東日本大震災後、団塊世代の申し込みが増えている」という。岐阜県は昨年7月、移住受け入れ先を紹介する施設を名古屋市に開いた。「大手製造業が集積する隣の愛知県は、定年後の田舎暮らしを夢見る団塊以降の中高年の宝庫だ」と県地域振興課の担当者は誘致に力を注ぐ。

移住者どう定着

移住促進で実績を上げているのが徳島県三好市だ。07年から20人以上の団塊世代が移住してきた。地元の特定非営利活動法人(NPO法人)「ふるさと力」が建てた移住者向けの農園付き住宅26棟が立ち並ぶ。花見や山登りなど交流を深めるイベントを定期的に催す。大阪府から夫婦で移り住んだ元小学校教諭の六角典恭さん(61)は「自然の中で人のつながりに感謝しながら生活している」と話す。

国立社会保障・人口問題研究所によると、35年の推計人口は東京が05年比で微増となる一方、大半の道府県が10~30%減少する。東日本大震災を機に生まれた都会から地方へ移住する人の動きが、地方衰退の流れを抑えることができるか。とりわけ経験が豊富で、リタイア直後で時間や体力に余裕のある団塊世代が大きな力になる。

移住者の受け入れには課題もある。団塊世代に人気の長野県安曇野市で移住者を支援するNPO法人「信州ふるさとづくり応援団」の宮崎崇徳・事務局長(45)は「移住者が気楽に来てすぐに都会に戻ってしまうこともある。これでは移住者のためにも地域のためにもならない」と警鐘を鳴らす。いかに新たな人材と交流してその力を引き出すか――人口移動の新潮流は地域の知恵を問うている。

(この項おわり)

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