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大学・高校 担い手育む 人口移動の新潮流(4)

地域再生 震災が問う

東京湾に流れる多摩川の水源地がある山梨県小菅村。人口800人ほどの山里に「多摩川源流大学」の"キャンパス"がある。東京農業大学が2007年から村と共同で始めた体験学習の場だ。

村人が実地教育

村の臨時職員になり、除雪作業をする小林さん(24日、山梨県小菅村)

農大の学生が民宿に泊まりながら、特産品であるコンニャクの作り方を教わったり、森林の間伐などに携わったりする。講師は村の高齢者たちだ。時にはどんど焼き、天神講など地元の伝統行事に参加して村の文化にも触れる。

昨春に農大を卒業し、村役場の臨時職員になった小林徹行さん(23)も受講生だった。東京都出身で農業とは無縁だった小林さんにとって「虫さされを治すのにヘビイチゴの焼酎漬けを使ったり、畑の周りにある石で頑丈な石垣を作ったりと、村の人々の知恵や技術が新鮮だった」。休耕田を再生した体験から「この地と長くかかわっていきたい」と思うようになり、村で暮らすことを決めた。

昔は地方農家の跡取りが多かった農大の学生も今は大半が都会育ちだ。「土いじりを体験しないまま卒業する学生もいる。学生に農業の現場を学ばせる機会を増やしたかった」と農大職員の石坂真悟さん(30)は源流大学の狙いを話す。学生に有機農業を教える藤木嘉さん(71)は「孫のようで励みになり、村も活気づく」と顔をほころばせる。

「島留学」をPR

「島の子どもを増やすにはどうすればよいか。重要なのは高校の魅力を高めることだ」。島根県海士町の山内道雄町長(73)はこう話す。松江市からフェリーで3~4時間、本土から60キロの隠岐諸島にある同町は、移住者の受け入れで成果を挙げてきた。町が水産・畜産の仕事や住居を移住者に紹介するなどし、約2400人の町民の1割強をIターン者が占めるまでになった。一方で地元で育った中学生の多くが卒業後に本土に高校進学・就職して戻らなくなることが悩みだった。

町唯一の県立隠岐島前高校の入学者は08年度、わずか28人だった。廃校の危機にあった同校を立て直そうと、町は昨年度から島外からの生徒受け入れを進めてきた。東京や大阪で高校説明会を開き、「島留学」とPRした。寮費や食費、帰省費用の一部を補助し、大学進学指導に力を入れている点を訴えた。

今年度の入学者40人のうち、東京や大阪など県外から8人、県内本土から5人の計13人が入学した。来年度は島外からの入学者がさらに増える見通しという。東日本大震災が決断を促した面もある。海士町職員の吉元操さん(52)は「人のつながりが希薄な都会よりも、自然の豊かな島の少人数教育に注目する親が増えている」と話す。

島外から生徒が集まり魅力の高まった同校を志望する地元の中学生も増えたことから、来年度の定員は2学級80人に倍増することが決まった。山内町長は「卒業後に島で働く生徒が増えてくれれば」と期待する。

都会の若者が高校や大学時代など若いうちに地方の生活に触れる機会が増えることは、潜在的な移住志向者を増やすことにつながる。小菅村や海士町での学校の取り組みは、若者を迎え入れる側の人々にも刺激を与え、地域活性化にも貢献することを示している。

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