節電転じて企業改革 成功組は冬も継続

2011/11/5付
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政府が今冬の東日本の節電の数値目標を示さず、今後の対策について様子見の企業が相次ぐなか、積極的に取り組む企業がある。今夏の節電に伴い、業務の内容や従業員の働き方を見直した結果、効果があったと判断したためだ。一時的な対応に終わらせないことで、経営効率化につなげる狙いだ。

ユニ・チャームは震災後に始めたオフィスの消灯を今も続けている(東京・港)

「退室10分前には暖房のスイッチを切って下さい」。ラガー、一番搾りなどを製造し、首都圏一円に届けるキリンビール横浜工場(横浜市)。約1200人の従業員全員に冬の節電対策を通知した。日中はブラインドを開けて日光熱を取り入れ、夜は閉めて保温効果を高めるなど13項目の細かい指示を出した。

■使用電力16%減

かねて同工場は「節電は生産の足かせではなく、改善できる工程の洗い出しにつながる」と位置づけてきた。被災した仙台工場(仙台市)の代替生産をしたにもかかわらず、7~9月の電力使用量は前年同期比16%減った。節電対策に伴い、生産工程を検証したところ、ろ過装置の洗浄頻度が必要以上に高く、コスト増要因だったことなどが判明し、作業の見直しにもつながった。

政府は今冬の電力需給対策として、関西電力管内で10%以上、九州電力管内では5%以上の節電を要請することを決めた。しかし、東京電力管内などでは「国民生活及び経済活動に支障を生じない範囲での節電を要請する」とするだけで、具体的な数値目標を示していない。

このため、対応を決めかねている企業は多い。特に困っているのは鉄道会社。夏は電力需要が高まるのは日中で、乗客が比較的少ない時間帯だったため、電車の間引き運転も可能だった。しかし、冬の需要ピークは早朝か夕方で、通勤や帰宅ラッシュと重なる。「照明の一部消灯は続ける予定だが、詳細は今後の電力需給などを見ながら検討する」(東京急行電鉄)

今夏は平日を休み、休日に工場を稼働させる企業も相次いだが、冬は見送る企業が多そうだ。解体機メーカーの坂戸工作所(千葉市、坂戸誠一社長)は6~9月、休日を日曜から金曜に振り替えた。金曜を休むため、部品は木曜日までに納入してもらう必要があり、取引先からは「納期が厳しい」などの意見が出た。今後は日曜操業は実施しない方針だ。

ただ、節電対策が業務改善に一定の効果をもたらした企業は秋以降も続けている。

■冬にも「夏時間」

午前8時前、東京都港区にあるユニ・チャーム本社にスーツ姿の人が次々に入っていく。夏の節電対策として5~9月に導入したサマータイムを2012年3月末まで延長した。社員約1200人のうち、約800人を対象に勤務時間を1時間早めている。

続けたのは、節電効果だけでなく、仕事の効率が上がっているからだ。サマータイム導入後、「午前中に会議を2件入れて、午後から会議で出た課題に対処するなど生産性も上がった」(広報グループ)。この結果、1人当たりの時間外勤務は平均で月3時間短くなった。通年での実施も検討している。

KDDIも今夏に実施した終日在宅勤務とサマータイムを冬以降も利用できるようにした。対象は全社員約1万1000人。在宅勤務の社員とは社内用のチャットなどで連絡を取り合い業務に支障が出ないようにする。

中堅・中小企業も小さな取り組みを積み重ねている。

かまぼこ製造の鈴廣蒲鉾本店(神奈川県小田原市)は今夏、事務職員は原則として午後6時以降の残業を禁止した。これを10月以降も続けている。今夏、社員の残業時間は従来の半分に減少したからだ。「決算処理を月末に集中しない」「作業工程を書き出して無駄をなくせ」。月1回、開く「業務レビュー」の会議では檄(げき)が飛ぶ。鈴木悌介副社長は「残業しないよう働き方を徹底的に見直すことで、コスト削減につながるだけでなく、社員の自己啓発の時間が増え、生産性が向上する」と強調する。

埼玉県が地盤のスーパーのヤオコーは今冬、昨年比約1割の節電に取り組む。4~9月は使用電力を前年同期比2割近く削減した。「細かな積み重ねによるコスト削減は欠かせない」という。

医療機器製造のニチオン(千葉県船橋市、本田宏志社長)は節電対策を話し合う会議を毎月開催している。照明の間引きに加え、製品を管理する倉庫の一部の窓に遮光フィルターを張って空調効率を高めるなどして、6~9月の電気料金を2~4割下げた。今冬の具体策は今月中旬に開催する会議で決定する。

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