2018年12月19日(水)

地熱エネルギーブームに乗り遅れる日本 九州大学の江原教授に聞く
編集委員 滝順一

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2011/8/31 7:00
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資源小国・日本が潤沢に備える数少ない資源のひとつが地熱だ。世界で3番目の賦存量(ふぞんりょう、理論上利用可能なエネルギー量)がありながら、その利用はあまり進んでこなかった。再生可能エネルギーの一角として、これから伸びが期待される地熱発電の潜在力と課題を日本地熱学会長を務めた江原幸雄・九州大学教授に聞いた。

江原幸雄・九州大学教授

江原幸雄・九州大学教授

――地熱発電に期待する声を耳にします。

「世界では地熱開発のブームが起きている。世界の地熱発電設備容量は2010年時点では約1070万キロワットだが、15年には8割増えて約1850万キロワットに達することがほぼ確実だ。米国やインドネシアが急速に拡大している」

「米国はオバマ政権が再生可能エネルギーを後押しているためだが、将来的には技術革新も期待できる。EGS(Enhanced Geothermal System、強化地熱システム)と呼ばれる技術の登場で、これまで地熱利用とは縁が薄かった米東部でも地熱発電ができる可能性が見えてきた。マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究グループがEGSについて報告書を発表して火が付いた」

――米グーグルが地熱発電に参入するというニュースがありましたが、あれはEGSなのですね。

「地熱発電には地下から高温蒸気を取り出すことが必要だ。EGSは石油採掘技術を応用した技術だ。地下の高温の岩盤に井戸を掘って水圧をかけて割れ目をつくり、そこに水を送り込んで人為的に高温蒸気を作り出す。これが可能になれば、米国全土で地熱を利用できるとMITの研究者は指摘した。欧州でも3000メートル以上の深い井戸を掘って地熱をくみ上げる試みが盛んだ」

――日本の状況は。

「日本はいったい何をやっているのかと海外からよく言われる。地熱の資源量では日本はインドネシアと米国に次いで世界3位だが、発電能力では8位だ。1990年代半ば以降、発電所の新設はなく、世界のブームから取り残されている。日本の導入量は約53万キロワット。トップの米国は約300万キロワット、2位のインドネシアは約200万キロワットと大きく引き離されている」

――なぜですか。

「ひとつには国の支援が十分でなかった。地熱発電は早くから実用化されていたため新エネルギーとして政府が改めて助成をする必要がないと考えられてきた。電力会社に新エネルギーの電気を一定量以上使うことを義務付けたRPS制度でも、『バイナリー発電』という開発途上の特殊な方式の地熱発電以外は新エネとはみなされていなかった。地熱開発への唯一の補助金といえるボーリング調査への助成は、昨年の事業仕分けによって大幅減額されてしまい、国の支援という面では非常に厳しい状況だ」

「また有望地点が国立公園内にあり景観保護の観点から開発が制限されていることや、温泉への影響を心配する観光業からの反対も大きい」

――国会で法律ができた再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度では地熱は買い取り対象になっています。事態は好転するのでは。

「その通りだ。買い取り価格は正式にはこれから決まるが、1キロワット時あたり15~20円と幅のある値段が取りざたされている。15円では地熱発電を拡大していくことは難しいだろう。20円なら条件のよい場所で新規建設に向けた動きが出て来るに違いない。できるだけ高い買い取り価格を望む」

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