原発事故、各国が日本の対応注視

2011/3/16付
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東日本巨大地震に伴う原子力発電所の事故に関し、世界各国が日本の対応を注視している。安全性への信頼が高かった日本で事故が起き、深刻さを増していることで各国は不安を募らせている。原発を保有している国や、これから推進しようとしている国で情報収集を急ぐとともに、国内政策を点検する動きが広がっている。

【ブリュッセル=瀬能繁】メルケル独首相は15日、1980年までに建設された旧型の7基の原子力発電所の稼働を一時停止すると発表した。「安全性がすべてを優先する」と指摘。前日に原発の稼働期間を延長する考えを見直すと表明しており、再検討する3カ月以内に廃炉にするかどうか決める見通し。

欧州連合(EU)は同日、緊急会合を開き原発の安全基準の見直しを含む対応策の検討に入った。事故拡大が報じられるなか「日本政府から詳細な情報提供を受けていない」(EU筋)こともあり、欧州の政策当局者の間では不安が先立つ。

エッティンガー欧州委員(エネルギー政策担当)は同日、「予測できる将来において、原子力を持たずにエネルギー需要を満たせるかという問題を提起しなければならない」と語った。ドイツ出身の同委員は原発推進派といわれてきた。

オーストリアのベルラコビッチ環境相は、欧州全域の原発の耐震性能を一斉点検する「ストレステスト」の実施を提案。欧州議会のライネン環境委員長(中道左派)も「欧州の原子炉の安全基準を再点検する必要がある」と支持した。

駐日フランス大使館は15日午前、福島第1原子力発電所の事故を受け、在日フランス人に対し「約10時間後には弱い放射性物質が東京に到達する可能性がある」と説明。「できるだけ目張りをした家屋の中にとどまるように」とパニックにならないよう呼び掛けた。

【ハノイ=岩本陽一】アジアで事故を深刻視する動きが目立ち始めた。電力不足解消へ原発推進を計画しているベトナムでは、同国の最高指導部である政治局のメンバーが14日、谷崎泰明駐越大使から日本政府と東京電力の対応などを聞いた。

原発建設の事業主体ベトナム電力公社(EVN)の担当者は日本経済新聞に「(政府から)計画見直しは指示されていない」と述べているが、国会議員の中には日本企業が建設する原発計画の安全性への懸念も聞かれるという。

ニュース配信の有力サイト、ベトナムネットは「(事故が)日本の原発輸出に影響を与える可能性がある」との専門家コメントを掲載。日本企業が同国で計画中の原発建設プロジェクトに影響を与えかねないと指摘した。インターネットでは「放射性物質が(東南アジアに)拡散し、雨と一緒に降り注ぐ」という書き込みも見られる。

韓国の教育科学技術省は15日、記者会見で原発専門家の日本派遣を準備しており、日本や国際原子力機関(IAEA)と協議していることを明らかにした。

韓国の聯合ニュースは同日、「日本国民は『安全神話が崩壊した』と受け止め、衝撃を隠せない様子だ」などと報道。ソウルでは14日に環境団体など18の市民団体がデモを実施し「(日本政府は)事故を矮小(わいしょう)化し、情報を透明に公開していない疑いがある」と訴えた。

オーストラリアの一部メディアは「日本の情報は信用できるのか」と不信感を示している。ラッド外相は12日に松本剛明外相との電話協議で被害の詳細を迅速に説明するよう求めている。

【ワシントン=大隅隆】米国で原発建設へ懸念の声が高まってきた。民主党のワクスマン下院議員ら4議員は14日、米国内の既存の原発が安全か緊急調査の実施を提案。下院エネルギー・商業委員会のアプトン委員長(共和)は16日の公聴会で、ジャッコ原子力規制委員会(NRC)委員長らの見解を聞く考えを示した。約30年ぶりの原発新設に動く米エネルギー政策への影響は必至だ。

民主党のマーキー下院議員は13日、「日本の災害は原子力発電所のもろさを示している」としてオバマ大統領に原発政策の再点検を求める書簡を送付。約20基の新規原子炉建設の一時休止と耐震性審査なども提案した。

オバマ政権側は米国の電力需要の2割を担う原発推進を堅持する構え。15日の下院歳出委員会でチュー・エネルギー長官は「原子力は重要なエネルギー源」と指摘。原発建設に360億ドルの政府保証を与えるオバマ政権の方針に理解を求めた。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は「危機があおる監督への疑念」と題した記事を掲載。「日本の原子力行政に関する長年の疑念をよみがえらせつつある」として、規制当局「原子力安全・保安院」は海外への原発売り込みに力を入れている経済産業省の一部であると説明。原子力行政の担当部門が原子力規制委員会(規制担当)とエネルギー省(振興担当)に分割されている米国と比較した。

米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は「当初は政府と東京電力による不十分で一貫性がない情報が混乱をもたらし、解釈が難しかった」と解説。「だが当局者に近い業界幹部は当局が炉心溶融をほとんど制御できなくなりつつあるということに強い懸念を示している」と問題がより深刻だったと強調した。

米CNNテレビも「繰り返されたウソ」「ごまかしの歴史」などのテロップをかかげ、「政府が信用を失うと混乱が広がる」などの専門家のコメントを紹介した。

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