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水族館に「2020年問題」 改修100億円超の例も

老朽化で 自治体財政を圧迫

全国の水族館が「2020年問題」ともいえる経営課題に直面している。一般に水族館は30年で大規模な改修が必要といわれる。1980年代後半から90年代にかけて、自治体が主体となった大型施設の開業が相次ぎ、これから10年前後で改修期を迎える。100億円規模の費用がかかるケースもあり、地方財政の新たな圧迫要因になりそうだ。

高さ7メートル、直径30メートルの巨大なドーナツ型の水槽に120匹のマグロが群泳する。延べ床面積1万3000平方メートル。葛西臨海水族園は東京都が88億円をかけて建設、89年に開業した。斬新な展示でその名が知れわたったが、20年以上が経過。配管は漏水し、ろ過装置の老朽化が進む。

都は09年にまとめた施設の維持更新計画で、12~14年度に同水族館改修のための設計などに着手する方針を盛り込んだ。ある幹部は「水槽の入れ替えなど大規模改修が必要」と打ち明ける。

90年前後に誕生した水族館が次々と「老い」に直面している。海水を使うため設備の損傷が早く、30年で大規模な更新が必要といわれる。しかも、ろ過装置や配管、水槽が一体化しており、全面的な建て替えを迫られ、建設費に匹敵する改修費用が必要なケースもある。数十億円から場合によっては100億円を超えるともいわれる。

これより古い施設ではすでに改修が始まっている。広島県廿日市市の宮島水族館はラッコ効果で一時は年間70万人が訪れたが、前回の大規模改修から30年近く経過した。建て替え後の延べ床面積は5800平方メートル。葛西の半分以下だが、事業費は40億円の見通しで、来年8月の開業に向け、工事が進む。

実は、合併前の旧宮島町時代から改修は大きな懸案だった。しかし、年間予算が20億円前後の同町には負担が大きく、1度、頓挫しかけた。廿日市市と合併したことで、国から手厚い支援が受けられる「合併特例債」を発行でき、財源を捻出(ねんしゅつ)できた。

水族館の改修が大変な背景には、工事期間の生き物の問題もある。

宮島水族館では1万3千匹を飼育していた。このうち、トドやアザラシなど大海獣は鳥羽水族館(三重県鳥羽市)、おたる水族館(北海道小樽市)などに移送。特に淡水魚では世界でも有数の大きさの「ピラルクー」は輸送中に酸欠になる心配があると、特別なコンテナを用意した。引っ越しがすべて終わるまで3カ月近くを要した。

世界最大の魚とされる「ジンベエザメ」などで人気の「海遊館」。大阪市の出資する第三セクターが運営する。建設費は200億円で90年に開業した。20年までに改修費などで100億円を超えると予想。市は負担を回避するため、保有株式の大半を他の株主に売却することでいったん合意した。しかし、調整がつかず、白紙に戻っている。

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