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夜中の目覚め「過度の心配は無用」

日中眠くなるなら要注意

夜中に何度も目が覚めて十分な睡眠が得られない「中途覚醒(かくせい)」に悩む人は多い。再び寝付けないとあせって目がさえ、いっそう眠れなくなる経験は誰にもあるだろう。ただ、人間がまとまって眠る習慣を持つようになったのは産業革命以降で、この200~300年とされる。日中眠くなるなどの問題がなければ、それほど気にする必要はないと専門家はいう。

厚生労働省が毎年公表している「国民健康・栄養調査報告書」の最新版(2007年)によると、「夜中に何度も目が覚める」と答えた人の割合は「時々ある」「しばしばある」まで含めると約45%。「夜、眠りにつきにくい」(約37%)「朝早く目覚めてしまう」(約44%)よりも多かった。とくに60歳を超すと「いつもある」と回答した人は10人に1人の割合でいた。

日本大学医学部の内山真主任教授(精神医学)は「高齢者が夜中に目が覚めやすくなるのは仕方がない」と話す。一般に睡眠時間は年とともに短くなる。健康だと65歳を過ぎるころには20代よりも約1時間少ないとされる。体が長い睡眠時間を欲しないにもかかわらず、朝早く起きる必要もなく時間に余裕ができるため、ついつい床にいる時間が長くなるからだ。

寝過ぎて不眠に

内山主任教授らは昨年8~9月、全国から無作為抽出した約2600人の成人を対象に「睡眠習慣と不眠」に関する面接調査を実施した。床にいる時間(床上時間)が6時間未満の人の中途覚醒の頻度が25.2%、6時間台~8時間台が同24.8%だったのに対し、9時間以上は44.3%と大きく跳ね上がった。内山主任教授は「少しでも眠ろうと長く床の中で過ごすようになり、中途覚醒などの不眠を慢性化させている」とみる。

多くの人は1日に6~8時間、まとまった時間を睡眠にあてるのが健康には理想的と思うかもしれないが、必ずしもそうではなさそうだ。

ヴァージニア工科大学の歴史学者であるロジャー・エカーク教授は、主に英国に残る日常生活を描写した歴史的文献から、昔の人たちの睡眠スタイルを調べた。少なくとも産業革命前の西欧における人間の睡眠は分断されていることがわかった。夜中に1~2時間の「中途覚醒」を挟んで、3時間前後ずつ眠っていた。夜中の目覚めの時間には隣の人を訪ねることもあったという。

「現代人が夜まとまって眠るのは、必ずしも自然なものでないのかもしれない。中途覚醒型の不眠は睡眠障害の一種とされるが、伝統的な睡眠様式が現代で主張を試みているのではないか」というのがエカーク教授のユニークな見解だ。

内山主任教授も「夜中に目がさめて眠れずにいると暗闇から警戒心だけが強まる。いっそう、電気をつけて眠くなるまで本を読むなどしたらよい」とアドバイスする。

高血圧症に悪影響

不眠と睡眠不足とは違う。昼間、ひどい眠気にひんぱんに襲われるといった日常生活への支障が出なければ、中途覚醒だけでそれほど気にする必要はなさそうだ。

ただ、最近の国内外の研究で、中途覚醒によって高血圧症や糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まることもわかってきた。血圧の場合、夜寝ている間に10~20%下がるのが普通だが、目が覚めるたびに交感神経が優位に働き、上昇する。

自治医科大学の苅尾七臣主任教授(循環器内科)は「中途覚醒は血圧コントロールの点からみるとマイナスに働く」と語る。侮ることはできない。

また、睡眠時無呼吸症候群や周期性四肢運動障害といった睡眠の病気で中途覚醒は起きやすい。アトピー性皮膚炎のかゆみや、肩や首の痛みでも目がさめる。こうした持病があり中途覚醒に悩むのなら、まず、病気の治療を優先させなければならない。(編集委員 矢野寿彦)

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