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個性派監督、夏のアニメ 躍動の作画・リアル追求…

公開中の「借りぐらしのアリエッティ」(c)2010 GNDHDDTW

今夏公開の劇場アニメーションに個性派監督の作品が出そろった。作画へのこだわり、日常を淡々と描く信念、「リアルっぽさ」の追求。それぞれに異なる作風が観客を楽しませそうだ。

スタジオジブリの新作「借りぐらしのアリエッティ」。6月、関係者向けの試写会があった。「どんな顔で見ているんだろう」。今作が初監督の米林宏昌(37)はジブリの腕利きアニメーターだが、演出経験はゼロ。それだけにすぐ後ろの席が気になった。尊敬する宮崎駿がいたからだ。

上映が終わると宮崎は米林の腕を高々と掲げ、笑顔で「よくやった」。米林はその時を「とにかく、うれしかった」と振り返る。

宮崎らの40年企画

家の床下に住む小人の少女アリエッティと人間の少年の心の交流を描く物語は、宮崎らが40年前から温めていた企画だ。監督を打診された際、米林は「そんなバカな」と戸惑ったが、無事やり遂げた。

「僕はアニメーター」と米林は繰り返す。その自負は作画の質の高さに表れている。家の庭を描いた背景画の色彩の豊かさ。人間の家の中をロープで登ったり降りたりと、躍動感にあふれるアリエッティをみずみずしく表現した。

「世界は美しく、アリエッティは生のエネルギーに満ちた少女であることを、作品の中で一貫して見せようとした。彼女の動きや表情から伝われば最高です」

8月21日公開の「カラフル」(c)2010 森絵都/「カラフル」製作委員会

死んだ魂が男子中学生の体に入って人生をやり直す「カラフル」。設定はファンタジーだが、監督の原恵一(50)は中学生の日常を淡々と描くことに内容の大半を割いた。「何気ない日常で、何気ないことがものすごい喜びになる瞬間がある。そこを描きたかった」

派手な場面も劇的なヤマ場もないが、感動が徐々に心にしみわたる。「作り手の『安心するカタチ』から離れて作りたい」。自然なアングル、奇をてらわない演出。「細心の注意を払い、なるべく無造作に見えるように仕上げた」

人気アニメ「クレヨンしんちゃん」でも、原は信じる道を行った。2001年の監督作「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」。公開前の試写で、家族愛の落ち着いた描写にテレビ局や映画会社の関係者は「何だ、これは」とぼうぜんとした。原は「お客さんも怒るだろうな」と予想したが、封切りになると、大勢の観客が喜んだ。

「自分の方法を守るのは勇気がいる。常に不安だ」とも。最も作りたかった映画「河童(かっぱ)のクゥと夏休み」(07年)を終えてしばらくは「抜け殻状態」だったが、今は「見る人の心に何かを残す作品を生み出したい」と意欲を示す。

徹底的キャラ作り

村の小学生5人が宇宙に旅立ち、冒険を繰り広げる「宇宙ショーへようこそ」。劇場映画に初めて挑んだ監督の舛成孝二(45)は、テレビアニメ「かみちゅ!」で文化庁メディア芸術祭優秀賞に輝き、脚光を浴びた。

公開中の「宇宙ショーへようこそ」(c)A-1 Pictures/「宇宙ショーへようこそ」製作委員会

「アニメでドキュメントを作る。それは無理だけど『本当かも』と思ってもらえる作品はできる」。自身の作風をそう語る舛成は今回、キャラクターの作り込みに最も神経を使った。5人の性格や行動を説明する冒頭の約20分のシーンに、絵コンテにかけた2年のうちの半年を費やした。

どんな時に泣いて、笑うのか。徹底的に想像を巡らせた。「キャラクターに共感してもらえれば、設定が唐突でもリアルっぽさが残る」という信念からだ。

2月にベルリン国際映画祭で同作を上映し、喝采を浴びた。映画をまた手がけるかは「運次第」、だが「熱意はある」と力を込めた。=敬称略(文化部 諸岡良宣)

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