地方の製造業に薄明かり 雇用拡大も足元弱く

2010/7/19付
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2008年秋のリーマン・ショック後、人員削減や工場閉鎖など苦境に陥った地方の製造業に明るさが出てきた。輸出に支えられる形で、雇用を増やしたり設備投資に踏み切ったりする企業もある。各地の製造業の動きを追った。

島根県東部の出雲地域は電子部品関連メーカーが集まる。最近、これらのメーカーでブラジル人が再び目立つ。3月末時点で700人余り。08年末と比べ2倍以上に増えた。契約を更新しない「雇い止め」の労働者が戻った格好。携帯電話などの部品になるコンデンサー生産がアジアへの輸出で回復したのが大きい。

自動車産業が集積する地域でも明るさがうかがえる。愛知県にあるトヨタ自動車グループの豊田自動織機は期間従業員の採用を約1年ぶりに再開し約350人を採用。デンソーも新たに約200人を募集した。

広島県が本拠のマツダも春以降の増産対応で期間従業員を増やし、7月1日までに約400人を採用した。「地域の雇用に貢献する」として、地元の機械メーカーから30人の出向を受け入れた。

経済産業省によると、全国の鉱工業生産指数(05年=100、季節調整値)は今年5月で96.1。09年2月に71.4まで落ち込んだが、生産水準が戻ってきた。

設備投資に動く企業もある。高松市のICメーカーのアオイ電子は高松工場を増設、8月にも完成予定だ。半導体集積回路などを製造し、投資額は約25億円。「今年度中にリーマン・ショック以前の受注状態に戻る」。木下和洋取締役は、中国など新興国向けの需要に手応えを感じている。

食品メーカーでも動きが出てきた。北海道では「白い恋人」で知られる石屋製菓がバウムクーヘンの機械を増設した。わかさいも本舗は年内に総工費5億円かけ、登別市内に焼き菓子「北海道じゃがッキー」の新工場を建設する計画だ。外国人を含めた観光客の土産品需要を期待する。

モヤシ製造の上原園(栃木県栃木市)が昨年から今年にかけてラインなどを増強した。消費者の節約志向で値ごろ感のあるモヤシが注目されたのが大きい。

欧州の信用不安、米中景気の先行き、円高など景気の先行きは不透明だ。メーカーの中には業況が厳しいままの企業もある。7月発表の日銀短観によると、製造業全体の10年度の設備投資計画は前年度比で2.8%増。09年度実績が32.6%の大幅減だったことを考えると、反発力はきわめて弱い。

「2年前に作ったクリーンルームにようやく出番が回ってきた」。工場などで使う高機能ホースメーカー、東葛工業(千葉市)の細井良則社長は受注回復に胸をなで下ろす。ただ「回復の持続性に期待が持ちにくい」と話す。

地方が回復を実感できるためには、なお時間がかかりそうだ。

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