2019年8月19日(月)

変わる子育て支援 「こども園」2000カ所どう実現?

2010/6/29付
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国の今後の子育て支援のあり方を示す改革案「子ども・子育て新システム」がこのほどまとまった。幼稚園と保育所の垣根など従来の仕組みを見直し、多様な保育サービスの提供やワークライフバランス(仕事と生活の調和)の実現を目指すという。子育て環境はどう変わるのか、識者や関係者に聞き新システムの課題を探る。

保育園不足は解消する?

保育所に入園を希望しながらも入れない待機児童は2009年4月時点で約2万5千人に上る。対策として、カギを握るのが幼保一体化だ。

新システムは幼稚園と保育所の垣根をなくし、幼児教育と保育をともに提供する「こども園」(仮称)に統一する考えを示した。共働き世帯が増え、幼稚園に通う子どもは減少傾向にある。そこで幼稚園の既存インフラを活用し、待機児童を受け入れる狙いだ。

ただ実現への道は険しい。幼稚園と保育所は就学前の子どもが通っている点では似通っているが、その目的は異なる。基本的に幼稚園は3歳児以上を対象にした教育機関で、保育所は保護者に代わり0歳児以上を預かる福祉施設だ。

市民団体「保育園を考える親の会」代表の普光院亜紀さんは「異なるニーズに対応して役割を担ってきた。それぞれの良さを失わずに一体化するのは難しい」と指摘する。

幼保一体化を目指して06年に国が制度を新設した認定子ども園の整備は進んでいない。国は12年度までに2000カ所以上と目標を定めているが、4月1日時点で532カ所にとどまる。縦割り行政の弊害にどうやってメスを入れられるかが問われる。

だれでも利用できるの?

新システムの特徴の一つは、市町村の裁量を認めたこと。地域の実情に合わせて、現金給付と保育サービスなどの現物給付の配分や子育て支援メニューなどを設計できる。自治体と連携して子育て支援事業に取り組む特定非営利活動法人(NPO法人)新座子育てネットワーク代表理事の坂本純子さんは「子育て支援のニーズは地域の住環境や生活様式によって異なる。裁量を市町村に委ねる仕組みは前進だ」と評価する。

ただ実際に利用者にあった支援策が提供されるか否かは市町村の力量次第。恵泉女学園大学の大日向雅美教授は「子育て支援はやすきに流れがちだ。地域によって支援内容に格差が出る恐れもある。最低限保障すべき基準を国が定めることも必要だ」と指摘する。

「小学館アカデミー神田駅前保育園」(東京都千代田区)

「小学館アカデミー神田駅前保育園」(東京都千代田区)

市町村にとってかじ取りは難しい。東京都三鷹市の清原慶子市長は「現金給付と現物給付のバランスが重要。地域の独自性が人によっては格差に見えるかもしれない」と話す。

サービス提供者をどう確保するかもまだ見えない。東レ経営研究所研究部長の渥美由喜さんは「企業参入の動機づけが明確でない。地域に需要があってもサービス事業者がいなければ介護保険と同様に一部で供給量が足りない事態になる」と解説する。

費用はだれが負担する?

新システムの最大の課題は財源だ。費用負担について検討会議は「両立支援・保育・幼児教育給付(仮称)に、事業主・個人が拠出することを検討する」「恒久財源の確保を前提として実施する」などと記すにとどまり、具体的な額や財源は明らかにしていない。

国は厚生年金雇用保険などに上乗せして企業負担を増やす考えだとみられている。ただ企業負担増にも限界がある。国の育児休業給付や学童保育などの子育て支援関連費用を年間約6千億円拠出している。「社会全体で子育て支援を担うなら、消費税を中心に安定財源を確保すべきだ」(日本経済団体連合会経済政策本部)との声もある。

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