2019年2月19日(火)

米研究所、人工細菌を作製 医薬品など応用期待

2010/5/21 3:00
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米国のJ・クレイグ・ベンター研究所(メリーランド州)は、人工的に化学合成したゲノム(全遺伝情報)を持つ細菌を作製することに成功した。望み通りの遺伝情報を持った「人工生命」を作り出す技術に一歩近づいた。医薬品やバイオ燃料の製造などに役立つ人工細菌の開発につながる一方で、生命倫理の問題に加え、細菌兵器などを生み出す恐れもあり議論を呼びそうだ。

米科学誌サイエンス(電子版)に21日掲載される。

家畜の体内などに存在し、牛に肺炎などの病気を起こすこともある「マイコプラズマ・ミコイデス」という細菌の人工合成を試みた。ミコイデスのゲノムの断片を人工的に合成した後、酵母で断片同士をくっつけて完全な長さのゲノムを得た。

合成したゲノムを、「マイコプラズマ・カプリコルム」というほかの細菌に入れたところ、元からあった細菌のゲノムが働かなくなり、人工的に合成したゲノムだけが働くようになり遺伝情報が完全に置き換わった。新しいゲノムからたんぱく質ができ、細菌として分裂や増殖も始めた。

これまで遺伝子を1個ずつ細菌などに入れてたんぱく質を作ることは医薬品開発などで実用化しているが、人工的に合成したゲノムによって遺伝情報を完全に置き換えたのは初めて。従来は合成が難しかった、効果の高い医薬品を製造したり、二酸化炭素(CO2)から環境負荷が少ないバイオ燃料を合成したりできる可能性がある。

ただ、全く新しい「人工生命」の作製につながるため、倫理的課題も抱える。思い通りの遺伝情報を組み合わせたゲノムから新しい細菌を作れば、テロに悪用できる細菌兵器や生態系を破壊する生物などもできる。技術開発の進展と同時に、社会全体で新たな技術を受け入れる体制について議論が必要となりそうだ。

J・クレイグ・ベンター氏は人間の全遺伝情報を解読したヒトゲノム計画をけん引した人物。ベンチャー企業であるベンター研を設立し、人工生命作りに挑んでいる。

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