女性はなぜ男性より長生き 精子に短命の遺伝情報?

2010/5/11付
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世界人口白書2009年によると、アフガニスタンなどを除く大半の国々で、平均寿命は女性が男性を上回っている。ロシアのように、その差が13歳にもなる国もある。先進国では100歳以上の「百寿者」の5人に4人が女性とされる。なぜ女性の方が男性よりも長生きするのだろうか。

東京農業大学の河野友宏教授と佐賀大学の川原学・准教授は昨年12月、欧州の医学誌「ヒューマン・リプロダクション」に「父親(精子)のいないマウスは長生き」という題名の研究論文を発表した。

独自技術で誕生させた「二母性マウス」が普通のマウスよりも平均すると約30%長生きするとの内容で、AFP通信や英国放送協会(BBC)など海外メディアが大きな関心を示した。

二母性マウスは、遺伝子操作で精子と同じ機能をもつ卵子を作製し、普通の卵子と融合させて作る。単為生殖とは異なるが、精子を使わずに子孫ができる。

クローン技術で作ったマウスが短命とされるなか、普通のマウスと同じ2年前後の寿命をまっとうできるかどうか検証する目的で研究が始まった。

05年から06年にかけて生まれた二母性マウス13匹と普通のマウス13匹を同じ条件で飼育しながら観察し続けた。意外だったが、二母性マウスの寿命が平均6カ月あまり長かった。中には1000日以上生きた二母性マウスもいた。

二母性マウスは実は「中年太り」しない。遺伝子操作が不完全で精子から受け継がれると発現する成長ホルモン因子が働かないからだ。成長後の体重は30グラム前後と普通のマウスよりも約15グラムもスリム。河野教授は「体が小さく代謝が少ないため、長生きにつながった可能性はある」とみる。

ここ数年の長寿研究でカロリー制限が長生きにつながるとの説が有力になりつつある。昨夏には米ウィスコンシン大の研究チームが20年にもわたるアカゲザルの観察実験で餌のカロリー量を3割減らすと糖尿病やがんになりにくいと米サイエンス誌に発表した。

今回の二母性マウスを使った研究から、精子に刻まれた遺伝情報が寿命にマイナスの影響を与えるため、雌が雄よりも長生きするという仮説が成り立つ。ただ、分子生物学的に説明づけるにはデータが足りず、長寿につながる未知の遺伝子が卵子側に存在することも考えられるという。(編集委員 矢野寿彦)

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