企業の生産に影響 自動車など停止、素材・製油所も打撃
東日本巨大地震
東日本巨大地震は日本経済全体に大きな影響を与えそうだ。最も深刻なのは企業活動への打撃で、東北から関東地方にかけて集積している自動車・部品メーカーの生産拠点が軒並み操業を停止した。石油大手の製油所で火災が発生し、鉄鋼の高炉が操業を止めるなど影響は広がっている。復旧が遅れれば、素材や電機、自動車など幅広い業種で生産が停滞する恐れもある。

日産自動車は東北や関東地方にある5工場の操業を地震直後から停止した。停止したのはエンジン工場のいわき工場(福島県いわき市)と横浜工場(横浜市)、車両組み立ての栃木工場(栃木県上三川町)と追浜工場(神奈川県横須賀市)。自動車用電池などの生産を手掛ける座間事業所(神奈川県座間市)も停止した。5工場の操業再開の見通しは立っていない。
トヨタ自動車は子会社の関東自動車工業の岩手工場(岩手県金ケ崎町)とセントラル自動車宮城工場(宮城県大衡村)の操業を停止した。
ホンダは埼玉製作所(埼玉県狭山市)、部品工場である真岡工場(栃木県真岡市)が操業を停止した。栃木県内の施設では、壁の崩壊や天井の一部が崩れるなどして三十数人のけが人が出た。
化学・鉄鋼も
真岡工場と本田技術研究所(栃木県芳賀町)は14日、従業員を自宅待機とする。埼玉製作所(埼玉県狭山市)、浜松製作所(浜松市)、鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)については生産を停止し、設備の点検などをする。
石油や化学、鉄鋼メーカーなども被災、主力工場で火災や操業停止が相次いだ。
JX日鉱日石エネルギーの仙台製油所(仙台市)では液化石油ガス(LPG)のタンクで火災が発生した。11日午後11時現在、火が燃え広がっており消火活動に入れない状況という。同社は仙台(仙台市)、鹿島(茨城県神栖市)、根岸(横浜市)の3製油所すべての操業を停止した。
タンクで火災
コスモ石油の千葉製油所(千葉県市原市)では、液化石油ガス(LPG)のタンクで火災が発生し、操業を停止した。同製油所は原油処理能力が日量22万バレルで、コスモ石油最大の製油所。家庭用のプロパンガスに使うLPGも供給する。原油処理装置は火災による損傷を受けていない。
三菱化学はエチレンなどを生産する鹿島事業所(茨城県神栖市)が停電のため操業を停止した。信越化学工業もシリコンウエハー子会社の信越半導体の白河工場(福島県西郷村)で停電のため操業を停止し、従業員を避難させた。
住友金属工業は鹿島製鉄所(茨城県)で津波警戒のため従業員を避難させ、高炉を含めた生産ラインを停止した。三菱製紙は主力の八戸工場(青森県八戸市)が操業を停止、津波の影響で建屋の1階部分が浸水した。
日本製紙グループ本社では主力の石巻工場(宮城県石巻市)が操業を停止した。隣接する社宅が高台にあり、勤務中だった従業員全員が作業を中止して避難した。岩沼工場(宮城県岩沼市)、勿来工場(福島県いわき市)も操業を停止。北越紀州製紙のひたちなか工場(茨城県ひたちなか市)も設備に被害が出て停止した。
住友大阪セメント子会社の八戸セメント(青森県八戸市)は地震直後から停電し、工場内のすべての設備が停止した。「内部の点検ができておらず、どの程度の被害があるかはわからない状態」(総務課)
ルネサスエレクトロニクスは茨城県ひたちなか市、山形県鶴岡市、青森県五所川原市などにある国内6カ所の半導体工場で生産を停止した。ソニーの磁気テープなどの生産拠点(宮城県多賀城市)では、津波による浸水被害が発生、約1000人の従業員が建物の上層階に避難した。
一方、オリエンタルランドは11日、東京ディズニーランド(TDL、千葉県浦安市)や東京ディズニーシー(TDS、同)の全アトラクションを地震直後に停止した。午後6時20分時点で、約5万5000人がパーク内に残っていた。12日は休園して点検し、結果を踏まえて13日以降の営業の可否を判断する。
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