ジョブズ氏死去、関連銘柄への影響は プロに聞く
米アップルの共同創業者、スティーブ・ジョブズ会長が5日、56歳で死去した。このニュースを受けた6日の東京株式市場では、欧米株高を引き継いで日経平均株価が上昇した流れから「アップル関連銘柄」とされる銘柄も上昇するところが多かった。ただ次々とヒット商品を生み出してきたカリスマ経営者が死去したことで、中長期的なアップルの経営戦略を巡る不透明感が浮上する可能性もある。アップル関連銘柄の先行きをどう見るかについて、市場関係者に聞いた。

「国内関連企業への懸念は少ない」
大和証券投資情報部部長 高橋和宏氏
米先物市場ではナスダック100先物指数が下げており、ジョブズ氏の死去は売り材料となっているようだ。ただ、このことがすぐに業績や経営に大きな影響を与えることは考えにくく、売りは短期的なものにとどまる。日本の「iPhone」(アイフォーン)関連銘柄に関しても、これで部品の需要が落ち込むといった懸念は出ておらず、6日午前の取引では第一精工やフォスターは小高く推移した。
8月にティム・クック氏が最高経営責任者(CEO)に就任した時点で、ジョブズ氏の健康問題は市場で意識されており、(死去は)想定されていた事態と受け止めることもできる。とはいえアップルは「iPhone」の新型「4S」を発表したばかり。同社は大きな節目にきているともいえる。
新型の「4S」はクラウド型のサービスに対応している。ジョブズ氏がすでに方向性を示している可能性もあるが、クラウド型のサービスを使って、どのように顧客の利便性を高めていくのかが今後重要になってくるだろう。

「ソフトバンク株の評価、判断難しく」
SMBC日興証券シニアアナリスト 森行真司氏
6日の東京株式市場で日経平均株価が大幅高となるなか、ソフトバンクが小幅安となる場面があった。「iPhone」(アイフォーン)をソフトバンクしか取り扱っていなかった従来なら、株価の材料になったと見ることもできたが、KDDIでも取り扱うことが決まっており、株式市場の反応をどう見極めるべきか、判断は難しい。
ジョブズ氏は最先端の技術と消費者のニーズを結びつけることが天才的に上手だった。すでに最高経営責任者(CEO)にティム・クック氏が就任していることもあり、当面、経営に影響が出ることはないとみているが、ジョブズ氏が亡くなったことはアップル社にとって大きな痛手であることは間違いない。
今後、アップル社が好調を維持できるかどうかのカギは「ジョブズ氏のこだわりを維持できるか」にかかるだろう。同社が2010年に発売した「iPhone4」は当初、黒モデルしかなく、白モデルの投入には半年以上の時間を要した。きれいな白を発色させることができず、販売を見送っていたためだ。そういったジョブズ氏の細かいこだわりが顧客に支持されていた面もあり、今後の動向が気がかりだ。
(聞き手は矢内純一)
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