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止まらぬ連鎖株安、反転の条件は プロの見方

(更新)

米景気の減速懸念や南欧の債務危機再燃を背景に、世界的な連鎖株安が止まらない。5日の東京市場でも、日経平均株価が大幅に反落した。世界の株式相場が下げ止まり、反転に向かうにはどんな条件が必要か、市場関係者に聞いた。

「米金融緩和でも、本格回復には1~2カ月」

大和証券投資情報部部長 高橋和宏氏

米景気の先行きへの見方が悲観に傾き、市場は追加の金融緩和を催促している。株式の持ち高を圧縮する投資家が増えているという需給要因も重なり、昨日の米国株は大幅に下げた。米国株は量的緩和第2弾(QE2)開始前の水準に戻りつつある。投資家心理がいったん悪化に傾くと、すぐに回復に向かうのは難しい。金融緩和などの支援材料が出てきても、投資家が先行きへの自信を取り戻し、株価が本格的に回復基調に戻るまでには1~2カ月かかるだろう。

過去の金融危機後には、米国の失業率は4年程度高止まりする傾向があった。今回も同様で、2008年のリーマン・ショック以降の失業率は高いままだ。本当は財政出動で補えればいいのだが、米連邦債務上限引き上げに至るまでの共和党の反対を踏まえると難しい。米国が打てる手は、量的金融緩和の第3弾(QE3)か、米企業に米国での投資を促す本国投資法(HIA)くらいだろう。

米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は金融政策の目的に雇用と物価の安定を挙げている。米国の7月の失業率が前回より悪化するようなら、金融緩和に踏み切るだろう。金融緩和で円高・ドル安が進むことを不安がる声があるが、米景気の悪化を放置した方がよりドル安基調が強まる。FRBの金融緩和は、基本的に日本株にも好材料となる。

(聞き手は北松円香)

「早期の米金融緩和がカギ」

岡三証券 石黒英之日本株情報グループ長

米国経済の減速や欧州の債務問題への懸念が膨らみ、ヘッジファンドなどが株式を売却する動きが世界的に広がっている。市場が米国に金融緩和を求める「催促相場」の様相を呈してきた。米連邦準備理事会(FRB)が早期に金融緩和に踏み切ることが相場底入れの条件になりそうだ。

日本は為替介入、欧州は欧州金融安定基金(EFSF)の規模拡大など手を打ってきている。いまの金融市場の動揺に対処する方針をまだ明確にしていないのは米国だけだ。

日本時間の今夜に発表される7月の米雇用統計が焦点になる。市場予想程度の内容であれば、FRBは追加の金融緩和に踏み切るのではないか。株安が逆資産効果をもたらし、米景気を下押しするリスクを警戒しているはずだ。来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)を待たずに、米国時間の金曜や週末に発表する可能性もある。

FRBが金融緩和を発表すれば、世界的な株高になるだろう。日本株も直後は上がるだろうが、金融緩和の影響で外国為替市場で円高・ドル安が定着する可能性があることが気がかりだ。これまで日本株は海外株に比べて相対的に底堅かったが、上値が重くなる可能性がある。ただ東日本大震災でいったん落ち込んだ国内経済が回復傾向にある点は株価の下支えになる。

(聞き手は北松円香)

「市場心理改善すれば、株価は底入れ」

バークレイズ・キャピタル証券株式ストラテジスト 高橋文行氏

世界景気の先行きに対する不透明感が強まっている。7月の米サプライマネジメント協会(ISM)景況感指数が低下し、市場心理の悪化が顕在化した。当社内の米国の機関投資家向けセールス担当者に話を聞いたところ、株価や景気の先行きについて悲観一色だった。景況感指数が米欧中で同時に悪化するのはリーマン・ショック以来のことだけに、市場は世界景気の先行きに対し、かなり神経質になっている。

目先は投資家のリスク回避姿勢が強まり、日経平均株価が一時的に9000円を割り込む可能性がある。ただ他の国と比べると割安感や出遅れ感があるため、9000~9500円が底値圏とみている。

市場心理が極端に悪化に傾いているだけなのか、それとも実体経済がかなり悪くなっているのかを見極める必要がある。今のところ、世界経済は悪い方向には向かっていないとみており、市場心理が落ちついてくれば株価反転する。日経平均は秋口には1万円、年末には1万0800円程度まで上昇するとみている。

(聞き手は佐竹実)

「日経平均の下値は9300円、米国株に割安感も」

SMBC日興証券国際市場分析部次長 橘田憲和氏

米国を中心とした世界景気の減速感はずっと懸念されており、新たな不安材料が出たわけではない。前日の米株式相場が大引けにかけて下げ幅を拡大したのをみると市場の不安が増しているように見えるが、これは株価指数先物などを自動的に売買するプログラム取引の影響が大きいのではないか。ここ数日の大幅な下落で米国株にはPER(株価収益率)の面などで割安感が出てきており、今後、一方的に崩れるとは考えにくい。

来週には米連邦公開市場委員会(FOMC)がある。米国では財政出動の余地が限られており、金融政策への注目度ががぜん高まってきている。今晩には7月の米雇用統計の発表も控えており、日本株をこれ以上売り込む動きは限られるとみている。為替介入の効果で円相場が一時に比べると円安・ドル高方向に振れていることも支えとなり、日経平均株価は9300円程度で下げ渋るとみている。

(聞き手は佐藤俊簡)

「米企業の在庫調整が必要」

東海東京調査センター投資調査部長 隅谷俊夫氏

株式市場は米国に金融緩和を求める催促相場の様相を呈している。だが、量的緩和第3弾(QE3)が実施されても、QE2のときのような株価の急上昇は難しいだろう。米国株との連動性が高い米鉱工業生産指数が今後、伸び悩む可能性が濃厚なためだ。

米鉱工業生産指数の伸びが止まってきたのは、在庫増加が原因だ。ガソリン高がもたらした消費減速の影響で、企業在庫はリーマン・ショック直前の2008年8月に迫る水準に積み上がっている。米国の感謝祭需要が出てくる9~10月ごろまでは在庫の調整は進まず、企業の生産活動は低調に推移するだろう。それまでは日米の株価もいまの水準で一進一退が続くとみている。

ただ米景気は基本的には拡大局面にあり、本格的に後退する可能性は小さい。足元の減速は一時的な調整とみる。住宅市場の低迷でも分かるように米景気は過熱からほど遠く、景気の山に達したとは言えない。第2次世界大戦後の米国の景気循環を調べると、景気拡大の期間は平均で4年10カ月。直近の景気の谷は09年6月なので、景気の拡大は少なくとも来年か再来年まで続くだろう。

(聞き手は北松円香)

「景気刺激と債務削減の道筋、米に必要」

りそな銀行チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏

株価が安定を取り戻すには、米国が短期的な景気刺激策と長期的な財政赤字削減の道筋をしっかり示すことが必要だ。米住宅市場が下げ止まるまでは財政支出による景気刺激を続けるべきだろう。米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長も指摘している通り、金融政策だけで米経済の改善を後押しするのは難しい。

やっかいなのは米債務上限引き上げ問題でみられたように、民主党と共和党が議会で対立し、政策がまとまりにくくなっている点だ。今秋に1.5兆ドルの財政赤字削減案を超党派の委員会でまとめる予定だが、その前の委員会の人選段階から紛糾するだろう。

どのような政策をとれば景気押し上げ効果があるのか、見えにくいのも問題だ。金融緩和に加え、財政支出、本国投資法(HIA)などの税制見直し、規制緩和などの政策を少しずつ同時に進め、景気の様子を見るしかない。ただ量的緩和など予想される政策の多くはドル安を誘導し、日本株にとっては不利な状況になってしまう。

欧州の財政問題も気がかりだ。いくら欧州連合(EU)がギリシャの支援体制を整えても、同国の財政赤字拡大に歯止めがかからなければ市場の不安は払拭されない。経済成長率を高め、財政赤字を削減するには、ギリシャ国内での合意形成と具体案が欠かせない。

(聞き手は北松円香)

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