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円安派に転向した投機筋、日銀緩和も背中押す

外国為替市場で、円売りの勢いが増している。15日の東京市場では一時、1ドル=78円台後半の水準まで下落し、昨年11月1日以来約3カ月半ぶり安値を付けた。日銀が前日の金融政策決定会合で、市場の予想外となる追加緩和措置を打ち出したことがきっかけだ。これまで円買いを仕掛けてきた海外ヘッジファンドなどの投機筋が一斉に円売りに動き、相場を加速させている。

日銀は、14日まで開いた金融政策決定会合で、資産買い入れ基金を10兆円増額し、65兆円とする追加緩和策を決めた。加えて、これまでの「中長期的な物価安定の理解」に替えて「物価安定の目途(めど)」を公表し、消費者物価指数の前年比上昇率で「当面1%」と具体的な数字も上げて、目指す方針を明確にした。

「日銀はサプライズ緩和で市場をまんまと出し抜いた」(外資系銀行)。今回の追加緩和は、金融政策は「変更なし」と見込んでいた大方の市場参加者にとっては寝耳に水。日銀の方針が伝わった14日昼の東京市場では、円売りが一気に加速。その後の海外市場でも円はさらに下げ幅を拡大した。

今回の円売りをけん引したのは、海外ヘッジファンドなどの投機筋とみられる。市場では「昨年の円高局面では円買いを仕掛けてきたヘッジファンドが、最近円安派に転向してきている」(三井住友銀行市場営業部の高木晴久副部長)。その兆候は1月末ごろからあった。

きっかけは、日本の2011年の貿易赤字が通関ベースで31年ぶりの赤字に転じたことだ。それまで日本の経済指標が円売り材料となることはほとんどなかった。ところがヘッジファンドなどの海外投機筋はこの報道に飛びついた。これ以降、「海外の投資家は円売りに興味を持ち、何か材料があれば円売りをしかけようと狙うようになった」(外資系銀行)という。市場では「日銀の緩和も、円売り派の背中を押した1つのきっかけとなったにすぎない」(ステート・ストリート銀行の富田公彦金融市場部長)とみている。

ヘッジファンドが取引の目安として重視するチャート分析上の重要な節目を超えてきたことも、円売りを加速させた。長期の移動平均線を組み合わせたテクニカル分析から導き出された円相場の節目は1ドル=78円台前半に集中していた。これを明確に下回ったことから「昨年10月の政府・日銀による円売り介入時の安値となる、1ドル=79円台半ばの水準まで円安が進む」(クレディ・アグリコル銀行外国為替部の斎藤裕司ディレクター)とみている。

とはいえ、投機筋主導の円安は長続きしないとの見方も多い。投機筋は利益を確定するため、仕掛けた円売りをどこかで必ず買い戻す。そのため一時的な相場下落要因にはなるが、長い目で見れば相場に与える影響は中立となる。JPモルガン・チェース銀行の棚瀬順哉チーフFXストラテジストは「今回の日銀の緩和は投機筋に格好の円売りの口実を与えたものの、こうした投機的な円売りは早晩巻き戻される可能性が高い」と見ている。欧州債務問題が依然としてくすぶっており、いつ再び円買いが強まらないとは限らない。持続的な円安基調へと相場が明確に転換するにはしばらく時間がかかりそうだ。

(経済金融部 浜 美佐)

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