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死ぬまでポートフォリオで資産管理をしよう

インデックス投資アドバイザー カン・チュンド

カネダマモルくんは全身汗まみれになりながら、営業所に帰ってきました。

「カネダくん。ワイシャツが体に貼りついているよ」。サキモトツヨシくんがカネダくんをからかいます。「サキモトくん。もう、今日はたいへんだったよ!営業車のエアコンが壊れちゃって……」

たしかにこの季節、クルマのエアコンが故障してしまうと運転どころではなくなりますね(カネダくん、お疲れさまです……)。

資産運用においては、ポートフォリオ(配分割合)がおかしくなると、あらかじめ想定していた投資ができなくなってしまいます。読者の皆さんは、メディアなどが報じる「これからはこの投資信託が狙い目!」的な情報に辟易(へきえき)したことはないですか? もういいかげん「どのファンドがいいの?」的な発想はやめて、「はじめにポートフォリオありき!」という思考に転換するべきでしょう。

ところでカネダくん、好きなブロガーの人っていますか?

「いますよ。七転び六起きさんです」

だっ、誰ですか、その人は?

「この人はアニメソングおたくとして、けっこう有名な人ですよ」

いえいえ、カネダくん。わたしが言ったのは資産運用のブロガーさんで、という意味です……。 実はこの5、6年で、一般サラリーマンの方が、投資信託で運用を実践しながら、自らブログを書くという「潮流」が生まれています。たとえば、水瀬ケンイチさんが管理人を務める「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)」(http://randomwalker.blog19.fc2.com/)が挙げられます。

水瀬さんをはじめ、ブロガーの中には自分の「ポートフォリオ」をブログ上で公表している人がたくさんいます。

「へえ、そうなんですか……」

カネダくん、本来、資産運用とは、「ボクのポートフォリオはこんな感じだよ」「ワタシのポートフォリオはこうです」というように、どんなポートフォリオを組んでいるかで比較されるべきもの……。たとえばカネダくん。毎月3万円の積み立て投資ができる原資があるとしましょう。これってポートフォリオを組んで運用しますね?

「はい、もちろんです」

この毎月ベースのポートフォリオは「配分割合」と規定しましょう。また、仮にカネダくんが800万円のお金を持っているとします。

「うわあ、ウソでもうれしいです!」(いえいえ、本当にしていかないと……)。

この800万円のポートフォリオは「資産配分」とイメージしましょう。さて、カネダくん。ここでクイズです。毎月3万円の配分割合と、800万円の資産配分は、やっぱり違う形になるのでしょうか?

「んー、やっぱり違う形でしょう……」

いいえ。毎月3万円の配分と、800万円の資産配分は「同じ」でよいのです。カネダくん、キョトンとした顔をしないで、ちょっと想像してみてください。もし、毎月ベースのポートフォリオと、800万円のポートフォリオが「違う形」だと、たとえば、カネダくんが日本株式ファンドを全資産の中で何割くらい保有しているかが見えにくくなってしまいます。全体のリスクの把握が難しくなるわけです。大事な基本ですが、毎月ベースのポートフォリオ+まとまったお金のポートフォリオ=カネダくんの資産運用ですよ……。

ところでカネダくんは最近、百貨店に行きましたか?

「はい……。ここだけの話、涼しいところでサボるために……」

正直に言ってくれてありがとう。百貨店の贈答品コーナーに行くと、「大皿・小皿セット」って置いてありますよね?

「はい……」

あれと同じです、毎月3万円の配分と800万円の資産配分は……。

「えーっと、言っている意味がよく分かりませんが……」

思い出してみてください。「大皿・小皿セット」はどちらも同じデザインになっていませんか?

「はい、なっています」

大皿のほうを800万円のポートフォリオ、そして、小皿を毎月3万円のポートフォリオとイメージしていただくと、カネダくんが実質保有するのは「ひとつのデザイン」=「ひとつのポートフォリオ」ということになります。

「なるほど、そういうことか……」

カネダくん、一挙に時間軸を長く取ってみましょう……。カネダくんが結婚して、お子さんが生まれ、カネダくんが40歳になったとき、カネダくんの「リスク許容度」が変化したとします。具体的には、許すことができるリスクの大きさが小さくなったとしましょう。そのとき、カネダくんはどうしますか?(前提は先週と同じ、MRF50%、先進国債券ファンド15%、日本株式ファンド5%、先進国株式ファンド15%、新興国株式ファンド15%というポートフォリオですよ)。

「んー、株式ファンドを半分くらい売ってしまうかも……」

いいえ、カネダくん。そういうやり方でリスク調整を行うのではないのです。今保有しているファンドそのものは変えずに、単純に「安全資産」の割合を増やし、安全資産を増やした分だけ、「リスク資産」の割合を減らしてください。また、人生の途上で別の変化が起き、許容できるリスクの大きさが大きくなれば、逆に「安全資産」の割合を減らし、その分だけ「リスク資産」の割合を増やしましょう。

私たちが背負う「リスクの大きさ」は、安全資産とリスク資産の「比率」を変えることで簡単に調整できるのです。それからカネダくん。お子さんが大きくなるにつれ、毎月3万円の積み立てが難しくなったらどうしますか……? そのときは「積立金額」を変更してよいのですよ。積立金額が増えたり減ったりすることは、長い人生の中では当然起こり得ること……(大切なのは「配分割合」を守るということです)。

そして、カネダくん。もう55歳です……。これまで安全資産50%、リスク資産50%というポートフォリオでやってきましたが、65歳という「定年退職」の時期が見えてきましたね。退職日の1カ月前に株式の暴落などがあっては大変ですから、65歳に向けて、規則的に、少しずつ「安全資産」を増やしていきましょう。そして、あっという間に65歳。これ以降、カネダくんのポートフォリオはどうなるのですか。投資信託は全部売ってしまうのですか?

「いいえ、多分違うと思います……」

そうですね。カネダくんはセカンドライフで必要な資金を定期的に引き出しつつ、運用を続ける人になります。

生活資金の引き出し方ですが、ポートフォリオの「資産割合」を崩さないように、各投資信託をそれぞれ部分的に解約するようにしましょう。運用をしながら、引き出しを続ける……。そして、カネダくんがこの世からサヨナラするときまで、ポートフォリオとの付き合いは続くのです……。

※8月26日(日)東京・大井町にて晋陽FPオフィス主催「投資信託DEつみたてセミナー」を開催します。

カン・チュンド>晋陽FPオフィス(http://www.sinyo-fp.com/)代表。CFP ファイナンシャルプランナー。1968年生まれ。在日コリアン3世。資産運用に特化したセミナー、コンサルティング業務を手がける。著書に「投資信託35の法則」(ソーテック社)「ETF投資入門」(日本経済新聞出版社)など多数。趣味は美術館巡り。

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