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『ビジネス創造の為のファイナンス』 楠達史氏

著者行間を語る

新しい勢力が台頭してくると、その世界は活気づく。ルーキーが活躍するプロ野球しかり、芸能界や文学界もしかり。経済の分野もそうだ。生きのいいベンチャー企業が次々に育つ国は活力がある。その典型は米国だろう。古くはIBM、その後もインテルやアップル、最近はフェイスブックなど、時代を切り開く企業がどんどん登場している。

『ビジネス創造の為のファイナンス』(東京図書出版)

かつて日本にもそんな時代があった。ソニーもホンダも小さなベンチャー企業から、大きく世界へ羽ばたいていった。その後もソフトバンク、ファーストリテイリングなどが成長しているが、ホリエモン事件のころを境に、我が国のベンチャービジネスに沈滞ムードが強まっているのは残念なことだ。

経済は革新がもたらす新しい技術、新しい製品、新しいサービスによって発展する。そんなベンチャービジネスを作り出すための、資金調達などの基本的なメカニズムを、実例を踏まえて説き起こしたのが本書である。ベンチャービジネスの資金確保には様々な手法があるが、本書ではそれを5つの発展段階に分け、成長段階に合わせた資金調達のあり方を解説している。

最も有力な資金調達手法であるベンチャーキャピタルについては、日本はもちろん、欧米の現状についても詳細に検証した。ベンチャーキャピタルがいかに企業を評価し、いかにして投下した資本を回収するかについての記述は、本書の中でも肝にあたる部分であろう。

理論ばかりでなく、実例も多く取り入れたのが本書のもうひとつのセールスポイントだ。ベンチャー企業の失敗の事例研究として、経営破綻したハイパーネット社について、創業者である元社長にインタビューし、その要因を分析した。本書を読んだ元日本興業銀行副頭取の清木邦夫氏からも、「理屈だけでなく、ファクトが淡々とつづられているのが良い」とお褒めの言葉をいただいた。

本書は当初、私が教鞭を取る嘉悦大学大学院ビジネス創造研究科、同大学経営経済学部の学生を基本的な読者像に想定して執筆したが、経営学を学ぶ学生だけでなく、現役の経営者、将来ベンチャービジネスを起業したいと考える方、日本のベンチャービジネス、ベンチャーキャピタルの現状や課題に関心のある方、投資家の方々にも、広くお読みいだだける内容だと自負している。

本書の刊行にあたって、私の学究面はもちろん、人生の恩師でもある加藤寛先生に巻頭言をご執筆いただき、「活力に満ちた日本となるために、本書が大いに生かされることを期待する」との励ましをいただいた。

また巻末に付記した「日米金融当局の物価安定の為の対応の相違について」と「日本における金融政策のあり方について」の論文もぜひお読みいただきたい。欧州金融危機のさなか、何かと注目を集める日米の中央銀行の金融政策について、課題とその対応策を提言した。

左から2人目が筆者。嘉悦大大学院生との夕食会で
楠達史(くすのき・たつし) 1942年4月広島県生まれ。65年3月慶応大経済学部卒、65年4月日本興業銀行入行。69年6月米MIT経営学部大学院修了、経営学修士号取得。米GMなどへの出向を経験し、97年資産運用会社GAM日本法人設立、社長に就任。2004年10月会長。11年9月嘉悦大大学院ビジネス創造研究科非常勤講師、事業創造論の講義を開始。

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