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日本株、バブル後の積み立て投資がついにプラス転換

編集委員 田村正之

「長期でも積み立て投資でも報われなかった」と責められ続けた日本株。しかし実は最近の株価上昇で、23年前のバブル崩壊以降に日本株に積み立て投資した場合の評価額が、累計積立投資額に比べてプラス転換した。「株は長期」というセオリーが「復権」する兆しになるかもしれない。

グラフAでは日経平均株価が過去最高値だった1989年末以降、「日経平均」という銘柄があったと仮定して、毎月1万円ずつ積み立て投資した場合の累積投資額と保有資産の評価額を計算した。例えば日経平均が2万円のときは0.5株、1万円のときは1株買うという計算だ。

最近の株価急伸もあって、22日終値で計算した評価額(株数×日経平均株価)は、累積投資額を約12%上回っている。

実際の投資では配当がさらに上積みされる。グラフには示していないが、配当込みの日本株指数で計算すると、評価額は累積投資額を足元では2割強も上回っている。

手数料は計算に入れていないが、最近は日経平均に連動するインデックス投信やETF(上場投信)で極めて低コストのものが売られている。それらを選べばコストの影響はかなり小さくしたうえで同様の投資が可能だ。

グラフAから積み立て投資の幾つかのメリットがわかる。日経平均自体は、最近回復したとはいえ、89年末の4割の水準。それでも積み立て投資でプラス転換しているのは、同じ金額ずつの投資のため株価が高いときは少量しか買わず、安いときにたくさん買うことになるので、平均コストを下げやすいからだ。

積み立て投資がプラス転換したのは、金融危機後では初めてだ。ただしもっと前を見ると、バブル崩壊後の日経平均の長期的な下落にもかかわらず、積み立て投資の評価額が累計投資額をわずかながらも上回った時期はほかにも4回ほどある。

損失を出さずにいったんは手じまえた機会がそれだけあったことも、高値での一括投資では不可能だった、積み立ての強みだ。

誤解が多いが、積み立て投資は一括投資するのに比べ、理論的には有利でも不利でもなく中立だ。どちらがいいかは値動きしだいであり、例えば長期的に一直線で上昇するような資産なら、最初に一括投資しておいた方が利益は大きくなる。

しかし多くの国の株式相場に見られるように、ジグザグしながら最終的に価格が上向く場合は、積み立て投資が有利になることが多い。積み立て投資でさえ日本株が累積投資額より長らくマイナスの状態だったのは、それほど低迷度合いが激しかったということだ。

実際、国全体の株価がこれほど長期で下落し続けたのは極めて異例だ。最大で9割も下落した大恐慌後の米国株価も、最安値は1929年の暴落後の3年後の32年。その後はかなりジグザクはしながらも基本的には回復基調だった。

積み立てでも長期でマイナスだった過去からは、日本株という「単一の資産」に集中投資する危険も改めて浮かび上がる。世界全体の株式の指数に積立投資していれば、評価額は円ベースでもはるかに大きなプラスになっている。

日本株の「かくも長き下落」がもたらした弊害は大きい。株安が個人、あるいは企業のバランスシートを傷めたのはもちろんだ。それ以上の痛手は「長期の株式投資は報われる」という国内外普遍であるはずのセオリーを疑わせ、揺るがしたことだ。

株式は原理的には、長期で価値が増していく「プラスサム」の資産。しかし現実の株価が長期で低迷したため、「投資をしたって仕方がない」あるいは「手っ取り早く外国為替証拠金取引(FX)で」という空気が広がった。

FXのような為替取引は、それ自体は「ゼロサム」(トータルではトントンで、誰かが得すれば誰かが損する)の取引。「金利差の部分がプラスサム」と勘違いされがちだが、金利差は長期では為替の下落で相殺されてしまうのが投資理論からみた原則で、実際にも長期ではそうなったことが多い。

ゼロサムの取引が悪いわけではない。しかし資産配分を考えるとき、株の長期投資のような「プラスサム」の対象を中心にしておいた方が、長期では報われやすい。そうしたセオリーも、長い株安でかき消されてしまった。

長期株安の要因の一つは長引いたデフレ。経済が低迷するデフレ下では金利の下落が続くことが多い。債券の価格は金利が下がれば上昇するので、債券投資が有利になる。

グラフBでは、グラフAと同様に日本の債券の指数(金利と価格変化の総合指数)に、やはり毎月1万円ずつ投資したと仮定して計算してみた。

早い時期から保有資産額は累積投資額を上回り続け、足元では累積投資額に比べ4割近いプラスだ。債券の指数が一貫して、しかも極めて安定して上昇を続けたことが寄与した。要するに過去二十数年は「債券の時代」だった(ちなみに債券への投資は最初の時点での一括投資が結果的に有利だった)。

公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がこれまで国内債券中心の運用をしてきたことに批判が多かったが、少なくとも過去のデフレ期においては、間違いとは言えなかったのではないだろうか。

ただしデフレの時代が終わるなら状況は変わる。政府の有識者会議は20日、公的年金に関する国債主体の資金配分の見直しを提言。GPIFが日本債券の運用比率を減らし株式を増やす検討が始まる。

「日本株の積み立て投資のプラス転換」は公的年金の運用姿勢の転換とともに、株価上昇による「株の時代」への予兆にも見える。

もちろん「株の時代」への転換が一本調子でいくとは限らない。米国の金融緩和からの出口政策の巧拙、新興国経済の失速懸念、欧州の債務問題など、くすぶり続けている不安も多い。株価は折に触れ、今後も何度も急落する場面がありそうだ。急落場面でも買い続ける積み立て投資は、今後も役割を発揮する可能性が高い。

月曜朝掲載の「マネー底流潮流」は編集委員の北沢千秋、土屋直也、田村正之が交代で執筆しています。来週は北沢です。

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