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低迷相場、個人投資家の上手な立ち回り方は

編集委員 北沢千秋

2011年も残すところ2週間。日経平均株価は年初からの下落率が18%に達し、年足は2年連続の陰線となる。夏場以降、株価は8000円強から9000円程度のボックス圏で膠着し、秋口からは東京証券取引所第1部市場の売買代金も1兆円割れが常態化した。下値不安を抱えて相場は動意に乏しく、商いも低調なのだから、日本株投資で利益を上げるのは至難の1年だったといえる。「世界経済の見通しは非常に暗い」(ラガルド国際通貨基金専務理事)とすれば、先行きも水準訂正の本格的な上げ相場は期待しにくい。個人投資家はこんな市場環境でどう立ち回ればいいのだろうか。

「株を買わない自由」を行使する

「今のような相場なら、個人投資家の方が機関投資家よりも有利」。太田忠投資評価研究所を主宰する太田忠氏はこう言い切る。その理由は明快。個人投資家には株式を買わない自由があるからだ。今年のような下げ相場で負けないための一番目の条件は、「株式を買わないオプション」の権利行使にあるというわけだ。

一般的な機関投資家の株式運用は「フルインベストメント」(株式組み入れ比率100%)が基本になる。資金をどんな資産に投じるか、アセットアロケーション(資産配分)を決めるのは企業年金など資金の出し手。運用会社のファンドマネジャーは任せられた資産に資金を投じて、最善の成果を上げるのが求められる役割だ。市場環境が悪いからといって株式の組み入れ比率を勝手に下げるのは、役割から逸脱した行為だと受け取られる。事情は個人向けの投資信託も同じで、「現金比率が10%を超えると社内のコンプライアンス(法令順守)部門から厳しいチェックが入る」という運用会社もある。

個人投資家が積極運用(アクティブ)型の株式投信に求めるのは利益(絶対リターン)を手にすること。ならば、相場の状況次第で現金比率を機動的に上げ下げするのは理にかなった投資行動のように思えるが、多くの運用会社はそういう考えを採らない。「大半の投信はアセットアロケーションという資産運用で最も難しい作業を個人投資家に丸投げしている」(ひふみ投信を運用するレオス・キャピタルワークスの藤野英人取締役)という見方がある。

一般論としてフルインベストメントは相場全体が上昇する局面では効率的な投資手法だが、今年のような年足陰線の下げ相場になると運用成績は悪化する。TOPIX(東証株価指数)など株価指数をベンチマーク(運用成績の目安)とするファンドはなおさらだ。

大したリターンが期待できないなら、「フルインベストメントという制約のない個人投資家が過大なリスクを無理して背負う必要はない」(太田氏)。株式の組み入れ比率を下げて上昇相場の到来を待つのが得策というわけだ。太田氏が個人投資家向けに提供しているモデルポートフォリオの株式組み入れ比率は現在20%。欧州ソブリン危機の広がりや深化などを見て、年初の70%からどんどん引き下げてきた。

「マイナス5%ルール」の徹底を

太田氏が挙げる個人投資家が負けない2番目の条件は、株式を買ったら「長く持ち続けない」ことだ。今や日本株は景気の好転・悪化とともに上げ下げを繰り返す循環株。ファンダメンタルズを支えに下値は限られるとしても、上値も重い。ボックス相場を前提にすれば、上げ下げのサイクルを熟知した「得意銘柄」をつくり、その銘柄を「安値圏で買って高値圏で売るという繰り返しで利益を積み上げるのが最も効率的な投資手法」だという。

太田氏自身は「ファンダメンタルズから見て、今ほど日本株を安く買える時はない」ともいう。ただ、安く買えてもそれがいつ報われるか「全く見通せない」のだという。5年、10年単位の本当の長期投資と割り切れば、持続的な利益成長が期待できる企業を選び出し、その銘柄を長期保有する「バフェット型投資」は否定されるものではないだろう。

3番目の条件は「リスク管理の徹底」だ。循環株の安値圏に投資したつもりでも、このご時世、何かのきっかけで株価は底を抜けてしまうかもしれない。リーマン・ショックのような「ブラックスワン」しかり、東京電力株しかり、である。

リスク管理の方法として太田氏が提唱するのが「マイナス5%ルール」。「資産が5%なくなるというのは個人にとっては大変な事態」。だから保有する金融資産の価値が5%値下がりしたら直ちに損切りすべきだ、という。例えば金融資産全体に占める株式の比率が50%だとすると、株式が10%値下がりすると資産全体の5%が失われることになる。そこで保有株式には常に買値の10%下に逆指し値の売り注文を出しておいて、値下がりに備える。保有株の塩漬けを回避すると同時に現金も確保できるので、次の投資機会への備えになる。

先に挙げた太田氏のモデルポートフォリオの年初来の収益率は4%強。今年の市場環境を考えれば、「健闘した」といえる数字だろう。

いつか上がると期待し続けるなら…

ちなみに、上記の2番目と3番目の条件を裏返しにして、銘柄を選別せず、長期保有を前提に、含み損が膨らんでも損切りをしないで株式を買い続ける投資方法が株価指数連動型ファンドへの積立投資である。

例えば過去1年間、毎月10万円ずつ「日経平均」を月末値で買ったとすると(配当、手数料などは考慮せず)、今年11月末時点での評価額は元本の120万円に対して約106万円になる。1年間の投資収益率はマイナス12%で、ドルコスト平均法の効果によって日経平均の下落率ほどには悪くない。元本を回復するのは日経平均が9500円を上回ったときである。同じ方法で3年間投資を続けたときは元本360万円に対して評価額は311万円(収益率=マイナス14%)、10年間では元本1200万円に対して評価額902万円(収益率=マイナス25%)となる。

こうした積立投資は銘柄や投資タイミングを選ぶ手間がなく、便利な投資方法である。ただし、「日本株(指数)はいつかは上がる」という期待を根気よく持ち続けることが投資の前提条件となる。

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