投資信託の通信簿「運用レポート」の読み方
インデックス投資アドバイザー カン・チュンド
カネダマモルくんからメールを受け取った筆者は、思わず吹き出してしまいました。「カンさん。ぼくは5月29日が誕生日なのですが、30代になってしまう前に、出来れば彼女が欲しいのです。どうすればいいですか?」……あの~カネダくん。まず、時間が足りません。彼女が欲しいといっても、一朝一夕に叶うわけではありません。もう少し戦略的にならないと……。

女性との出会いがありそうなイベント、会合などに出向くとか。それも一回だけでなく、足繁く通うくらいの覚悟が必要です。そして、自分をアピールすることも大切ですね。
先週、投資信託説明書のお話をしましたが、ファンドもさまざまな「情報源」を用いて、自らの存在をアピールしています。カネダくん、聞いていますか?
「あっ、はい……」
私たち消費者は、ファンド側が発するさまざまな情報源の「違い」を吟味する必要があります。
「なんだか難しそうですが……」
いいえ、カネダくん。今日はズバリ申し上げましょう……。ファンドのパンフレットとは、詰まるところ、美辞麗句が散りばめられた「チラシ」です。投資信託説明書は(どちらかというと)よそ行きの「決意表明書」です。実は、カネダくんがいちばん重視すべき情報源は、ファンドの「運用レポート」なのです。
「えっ、何ですかそれは?」
運用レポートとは、投資信託の中身とこれまでの成績が記されている、ファンドの「通信簿」のことです。私たちはこの「運用レポート」から、投資信託のさまざまな特徴と実績を読み解くことができます(さらに申し上げると、運用レポートのコンテンツには、パンフレットと投資信託説明書の「要点」が含まれています)。
カネダくん、さっそく運用レポートをのぞいてみましょう(注:運用レポートは、ファンドの販売会社、運用会社のホームページで確認することができます。もちろん印刷することも可能です)。
まず、運用レポートの1枚目を見てください。私たちが注目すべきは「グラフ」です。
「えっ、グラフですか?」
はい、カネダくん。このグラフにはファンドのこれまでの成績が折れ線で記されています。
「あっ、この基準価額の推移グラフですか? あ~あ、途中までいい成績だったのに……」
カネダくん、違うのです……。最初に見るべきは、基準価額の推移グラフではありません。このコラムで何度か「分配金」のお話をしたのを覚えていますか?
「はい……」
投資信託という商品は、途中で分配金が出されてしまうため、基準価額の推移と、ファンドそのものの収益の間に「ズレ」が生じてしまいます。つまり、基準価額の推移は、ファンドそのものの成績を示すものではないのです。
「なんだか前に聞いたことがあるような……」
カネダくん、もう一度グラフを見てみましょう。私たちが注目すべきは、「そのファンドがもし、一度も分配金を出さずに運用していたら……」という、仮定上の収益を示すグラフです。
「カンさん。何ですかそれは?」
はい。実は投資信託には「騰落率」という考え方があります。「騰落率」とは、もし、そのファンドが一度も分配金を出していなければ、こんな成績になっていたよ、という「仮定上の収益率」のことです(ファンドの実力を知る上ではもっとも重要な物差しとなります)。
カネダくんが見るべきは、ファンドの騰落率を表す「税引前分配金再投資基準価額」の折れ線グラフなのです。
「……カンさん。13文字熟語……」
すみません、カネダくん。そんな苦い顔をせずに、続いて「期間別の騰落率」の表を見てください。運用レポートの「期間別騰落率」の表には、ファンドのこれまでの騰落率と、ベンチマークそのものの収益率が時系列で載っています。3カ月、1年、3年と記されているのは「直近」という意味です。たとえば3年とは、「直近3年の騰落率」、そして「直近3年のベンチマークの成績」を指します。カネダくん、この表を見ればズバリ、投資信託の実力が分かるのです。
思い出してもらいたいのですが、アクティブ・ファンドってどんな投資信託でしたか?
「えー、ロマンを求めるファンドです」
そして……?
「市場の平均点を上回る収益を目指します」
そうです、素晴らしい!では、インデックス・ファンドは?
「市場の平均点と連動することを目指すファンドです」
その通りです。ちゃんと復習していますね。つまり、運用レポートに記載されている「期間別騰落率」の表を見れば、それぞれのファンドがきちんと仕事をこなしているかどうかが分かるのです。たとえば、アクティブ・ファンドとそのベンチマークを比較してみましょう。
3カ月、1年、3年、設定来と、そのアクティブ・ファンドがコンスタントにベンチマークである「市場平均」を上回る成績を残していれば、それはよい仕事をしているアクティブ・ファンドといえるでしょう(運用の目的をきちんと果たしているからですね)。
一方、インデックス・ファンドでは、ファンドの騰落率と、ベンチマークの成績の間に「ズレ」が生じていないかで、ファンドの良し悪しを判断します。つまり、投資信託の評価の仕方は意外とシンプルなのです。
筆者は毎月分配金を出すことで有名な「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」をまったく評価しませんが、その理由のひとつは、このアクティブ・ファンドの成績が、ベンチマークである「シティグループ世界国債インデックス」をコンスタントに下回っているためです。
※ 6月24日(日)東京・渋谷にて晋陽FPオフィス主催「投資信託DEつみたてセミナー」を開催します。

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