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サラリーマン、家を買うなら60歳・現金で

現役時代は賃貸 資金をためて「終の棲家」を

いつかは手にしたいマイホーム。住宅ローンを組むなら働き盛りの今のうちに……と考える人も多いだろう。しかし、住宅は人生最大の買い物。時期や物件を誤ればローン返済で家計が火の車に陥ることも少なくない。生涯にわたる生活設計を考えたうえで、どのタイミングでどのような住まいを選ぶべきかを考えよう。

「住宅ローンを抱えるリスクはここ数年で格段に高まっている」。ファイナンシャルプランナーの紀平正幸さんは住宅購入を検討する人にこう注意を促している。「定期昇給や終身雇用はかつてのように期待できないうえに、転職やリストラで収入のない期間が生じる危険性は高まっている」(紀平さん)。ちょっと背伸びして購入した住宅のローン返済に窮する家庭からの相談も増えているという。

相続や親の金銭的支援を期待できない人にとって、間違いのない住宅計画には家庭の貯蓄残高の生涯推移と照らし合わせて考えることが必須だ。現在30代半ばで子ども2人を持つサラリーマン家庭が住宅を購入した場合の貯蓄残高の推移を試算してみた。

グラフAのベージュの部分は、35歳で貯蓄1000万円を持ち、年収600万円の夫と専業主婦の妻、未就学児2人の世帯が将来を考えて広めの一戸建てを5000万円で購入した場合の推移だ。貯蓄のうち750万円を頭金に充てたとする。一般的な生活費でやりくりしていては、購入当初から常に赤字で、子どもの大学入学など出費が相次ぐ50代には3000万円を超える赤字となってしまうことがわかる。

夫の年収が700万円だった場合が水色部分。生涯収入が大幅に上がるものの、やはり50代には1500万円を超える赤字を抱えてしまう。かなり切り詰めた家計で生活をしなければならない。

 紀平さんは「貯蓄残高の推移には『50代の谷』が存在する」と指摘する。給与所得が伸びなくなり、子どもの大学入学費用など、貯蓄を崩さざるを得ない出費がかさむ。住宅ローンを組むなら、まずこの50代の谷を乗り越えられる計画なのかどうかを考えなければ安心して老後を迎えられなくなってしまう。

一方、妻も60歳になるまで働き続けた場合(グラフB)はローンを返し続けても59歳の時点で約5800万円の貯蓄ができる。夫婦2人の退職金を得た60歳の貯蓄額は約9000万円に上る。50代で一時的に貯蓄の伸び率が鈍化するものの「谷」はみられず、老後に備えるには十分な資産を用意できる。体の衰えを感じたら介護付きの施設を買って住み替えることも可能な貯蓄額だ。

「子ども2人を持つ家庭が30代で家を買う場合、妻の年収200万円が損益分岐点になる」と紀平さんは指摘する。妻が厚生年金に加入し続けて働けば、2人の年金受給額も増えるため安心して老後を迎えられる。

念願のマイホーム。夫婦共働きでないと手に入らない夢で終わってしまうのだろうか。紀平さんによると、家計を圧迫するうえ返済不能になるリスクも負う住宅ローンを使わずに住宅を購入する方法があるという。「60歳、キャッシュでマイホーム計画」だ。定年までは賃貸住宅に住み続ける。そのうえで、30代で住宅を買うとしたら支払うであろう頭金相当額と、修繕積立金などの毎年かかる住宅維持費分を60歳まで手をつけずに運用する計画だ。

 60歳になるころには子どもも独立し、一般的なサラリーマンは現役も引退している。「都心から離れた静かな場所で、夫婦2人が暮らすに足りる広さのマンションを購入するには2000万円もあれば十分」(不動産調査会社・東京カンテイの中山登志朗上席主任研究員)だ。

たとえばグラフAで紹介した年収700万円のファミリー世帯が35歳から家賃20万円の賃貸マンションに住んだ場合、特に運用をしなくても59歳時点で約800万円が貯蓄として残り、退職金を得た60歳には約2900万円になる(グラフC)。

賃貸なら家計や勤務先の移動など、生活環境の変化で住み替えも簡単にできる。現役時代に住む住居の家賃を下げれば、その分を貯蓄に回すこともできる。

35歳で750万円の頭金を払うつもりだった人が、この資金を25年間1%で運用すれば、60歳になるころには937万5千円となる(図D)。さらに年50万円の住宅維持費を年1%の運用で積み立てれば、1283万7千円。合計2221万円2千円となり、夫婦2人の「終の棲家(すみか)」もキャッシュで手が届く。

試算は夫の年収が年2%ずつ上がり、物価が0.5%上昇することを前提としている。低成長と長引くデフレの日本の実態は、より厳しい。右肩上がりで給料が上がり、雇用も安定していた時代と違い、今は生活設計にいくら慎重になっても足りないくらい。住宅購入という夢が、後々の生活で「悪夢」となってしまわぬよう、まずは貯蓄計画と生活設計を見直してみたい。

(電子報道部 岡田真知子)

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