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株、問答「無用」から「あり」の相場へ

編集委員 北沢千秋

日経平均株価は前週、週間ベースで13週ぶりに下落。昨年11月半ばから続いた上昇相場はようやく一息ついた格好だ。もっとも、市場の先高期待は相変わらずだし、東証1部の売買代金は連日2兆円を大きく上回る活況。「相場が崩れる懸念は小さい」という見方が市場の大勢だ。一方で、2013年3月期第3四半期決算の発表がピークを超えて、企業業績を冷静に見ようという機運も高まっている。相場の中身を見ると、微妙に強弱観の対立が強まってきた感触もある。円高是正とデフレ脱却の期待を原動力とした問答無用の上げ相場は、ひとまず収束に向かいつつあるようだ。

「ファンダメンタルズはノーチェック」

「典型的な金融相場。カネ余りと来期の業績はよくなるという安心感で、株価が安いという理由だけでどんな銘柄もむちゃな買われ方をしている」。田辺経済研究所の田辺孝則代表はそう話す。その一例が、1日の大引け後に第3四半期決算を発表したパナソニックという。株価は週明けの4日にストップ高。アナリストによる目標株価の平均(約590円)をあっという間に置き去りにして、7日には781円の高値を付けた。「決算内容は本業の収益回復を感じさせる内容とは言えなかった」というのが田辺氏の見方。パナソニック株のストップ高には首をかしげた市場関係者も多い。

「ファンダメンタルズはノーチェック。株価の安さと値動きがすべて」。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長はそう指摘する。例えば日本板硝子。日本企業の中では債務不履行の保険料であるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の料率が高い企業の一つというが、株価は7日に128円の高値を付けて、年初来安値からの上昇率は35%に達した。6日に141円の高値を付けた神戸製鋼所の年初来安値からの上昇率は45%で、最大手の新日鉄住金を大きく上回る。

個人の信用マネーにバブルのにおい?

時には「木の葉が沈んで石が浮かぶ」のも株式相場。ファンダメンタルズはお構いなしのそんな相場をリードしているのは信用取引をする個人投資家だ。1月1日からの規制変更で証拠金を1日に何度も利用できるようになり、資金のパワーは格段に増した。

藤戸氏によると、信用マネーが年初に真っ先に飛びついたのがノンバンク株。大発会の売買代金上位にオリコとアイフルが突然顔を出し、違和感を持った人も多いかったはずだ。その後、信用マネーはナノキャリアなど東証マザーズ市場のバイオ株、パナソニックやソニー、足元ではマツダになだれ込み、大商いを演じてきた。この上げ相場で「億円単位の利益を上げたデイトレーダーの話も聞こえてくる」というから、ちょっとバブルなにおいもする。

もっとも、力業で銘柄を買い上げる手法は必ずしも成功例ばかりではない。例えばニコン。「円安効果で上方修正がある」との読みで6日の第3四半期の決算発表前まで買われたが、予想に反して業績予想は大幅な下方修正。一眼レフカメラの不振という想定外の事態が明らかになり、投げ売りを誘った。ソニー、ヤマハなども期待が空振りに終わったケースだ。

ピークを超えた第3四半期の決算発表で改めて明らかになったのは、同じ外需関連でも企業によって円安の利益押し上げ効果にかなりの差があること。そして業種や企業によって、本業の収益力の回復度合いには大きな開きがあることだ。企業業績全体では来期、大幅増益になるとしても「企業間で大きな格差が生じるだろう」(田辺氏)。来期の業績を織り込みにいく今後の相場は、選別物色の色合いを強めていかざるを得ない。

日経平均の昨年11月半ばからの上昇率は3割超。しかも上げピッチが急だっただけに、相場の先行きについても次第に強弱観が対立してきたようだ。海外投資家の買い越しは続いているが、これまでのような買い一辺倒ではなく、一部のヘッジファンドには利食いの先物売りも目に付くようになってきたという。

若い女性が株に関心を持ち始めたら

「世界を見渡しても大きなリスク要因は見当たらず、久々に相場上昇の条件が整っている。株価の水準訂正が進んだといっても、まだ訂正途上の業種もあるし、中小型株を中心に好業績でも株価が一向に反応しない銘柄も数多い」。そう話すのは太田忠投資評価研究所の太田忠代表。今期業績が最悪期となりそうな海運や、これまで業績が評価されてこなかったメガバンクなどの戻りはまだ不十分で、微調整を挟みながらも強い相場は当面続くと予想する。

一方、マネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジストは「とりあえず上昇相場の第1ラウンドは終わった」とみる。来期(2014年3月期)の企業業績が3割の最終増益、PER(株価収益率)は米国並みの13倍台とすると、今の株価は高くもないし安くもない、ほぼ妥当な水準という。「相場にどれだけの伸びしろがあるかは来期の業績次第。4月から始まる通期の決算発表を確認するまでは何とも言えない」と話す。「若い女性が株式投資に関心を持ち始め、週刊誌に株価予想の威勢のいい見出しが躍るようになったら要警戒」が持論。世の中の雰囲気はその基準に抵触しつつあるようだ。

小休止か局面の転換か。いずれにしても、第3四半期の決算発表を経て、猫もしゃくしも問答無用で上がる相場は転機を迎えた可能性が強い。今後の相場に向き合う投資家には、これまで以上に業種や企業を選別する目と、慎重さが求められる。

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