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消費増税で景気減速懸念、日銀追加緩和の観測じわり

編集委員 土屋直也

安倍晋三首相が消費税の引き上げを決めた1日付のフィナンシャル・タイムズ紙は「東京の税制策、追加量的緩和(QE)をメニューに載せた」とするアナリストのピーター・タスカ氏の寄稿を載せた。消費税上げの悪影響を打ち消すための追加緩和観測が市場でちらつき始めた。

1日発表の日銀短観にみられるように日本の景気は絶好調だ。なにしろ業況判断指数(DI)は大企業製造業でプラス12と、リーマン・ショック後で最高になった。来春の消費税上げが確定し、年度内の駆け込み需要により経済拡大は加速するのが確実だ。足元は景気てこ入れが必要な状況ではない。

問題は、消費税上げの反動による来春以降の景気減速は確実な点。消費税上げ決定と同時に固めた法人減税や公共投資増などで十分かどうか。判断は分かれるだろう。

メリルリンチ日本証券の吉川雅幸チーフエコノミストは「来春の追加緩和の可能性は高く、早ければ来年1~3月の可能性も捨てられない」と分析する。同氏が重視するのは、日銀が政策目標とする消費者物価(CPI)の動向だ。

日銀が重視する生鮮食品を除く消費者物価は8月分が前年同月比で0.8%上昇と「デフレ脱出」を思わせる数字がでてきている。

だが、エネルギー価格が前年比で9%近くも上昇していることがCPIを押し上げている。「来春以降はエネルギー価格の上昇が鈍った場合、黒田日銀の目標であるCPIの2%上昇を確実にするべく追加緩和が必要という議論が浮上する」と指摘する。

 足元で円高気味に推移する円相場の行方を気にかける向きもある。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の芳賀沼千里チーフストラテジストは「雇用環境もよく、今後数カ月は緩和が議論される状況にはないが、為替が大きく円高に振れるようなら別」と、為替次第では追加緩和の可能性もなくはないとみる。

反対に、追加緩和に否定的な声も少なくない。野村証券の松沢中チーフ金利ストラテジストは「来夏ぐらいには現状の大規模緩和の2015年度以降の継続を打ち出す」とはみているものの、量的緩和の強化には否定的だ。

金融政策決定会合後、記者会見する黒田日銀総裁(4日午後、日銀本店)

ソシエテ・ジェネラル証券の島本幸治東京支店長も「追加緩和はしづらい」と読む。国債の新規発行額の7割を日銀が購入する4月の異次元緩和の量的な強化は、「市場の混乱を生みかねない」と指摘。今年4月以降の長期金利の急上昇の再燃を懸念する。「もし、追加緩和なら、国債以外のリスク資産に購入を広げる必要がでてくるのではないか」との見立てだ。

黒田東彦日銀総裁は、4日の記者会見で海外のリスク要因などには触れながら、今後の金融政策に関し「上下双方向のリスクを点検し、必要な調整を行う」と従来の立場を正確に繰り返した。

来春の消費税上げによる景気減速と消費者物価の上昇鈍化の可能性を巡って、追加の金融緩和の論議はジワジワと高まっていくことになるのだろう。

月曜朝掲載の「マネー底流潮流」は編集委員の北沢千秋、土屋直也、田村正之が交代で執筆しています。来週は田村です。

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