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円高は世代間格差を広げるか

昨晩、欧州中央銀行(ECB)理事会後の失望感にマーケットが揺れた後、ニューヨークの市場関係者たちとのチャットで、日本経済についてのニューヨーク・タイムズ記事がひとしきり話題になった。「円高が日本の世代間格差を拡大している」との見出し。たしかに、円高デフレは現役世代の雇用・収入を直撃し、退職世代は物価下落による恩恵を受けやすい。円高の痛みを若い世代ほど強く感じることになる。

しかし、円高で株価が下落することで個人金融資産保有が集中するシニア世代も、痛みを感じている。例外といえば、タンス預金主義者の高齢者たちか。運用しなければ、株価下落の直接的影響は受けず、日用品の物価下落のメリットは享受できる。しかし、彼らとて、自分の受け取る年金の運用は、円高で痛んでいる。

グローバル・ママ・ネットワークというお母さんたちのネットワークに招かれ講演した

一方、現役世代、特に20~30代の夫婦たちが、ただ手をこまぬいて円高を傍観しているわけではない。先日、一般財団法人インターナショナル・ウーマン・クラブに属するグローバル・ママ・ネットワークというお母さんたちのネットワークに招かれ講演した。「世界のどこにいても自分の能力を開花させ、たくましく生きていける子供を育てたい」と願うママたちの集まりである。

華僑、印僑のごとく、和僑を目指す人たちにとっては、円高こそ海外移住のチャンス。まだまだ少数派ではあるが、今後、円高が進行すれば、若者の海外進出が加速する兆しは見られる。既に、マネーの流れの面では、経常収支の黒字が、貿易収支より所得収支の黒字で支えられる構図になりつつある。つまり、海外での投資収益で稼ぐ経済の体質へ移行しつつあるわけだ。

人の流れが外に向かうのは当然の経済環境である。若者向け「海外移住セミナー」なども盛況と聞く。筆者の周辺でも、サラリーマン生活に見切りをつけ、蓄えを元にアイルランドなどに海外留学するケースが出てきた。子供をインド系のインターナショナル・スクールに入れたいという勇ましいママもいる。たしかに、新興国の環境で育てるほうが、子はたくましく育つだろう。

ロンドン・オリンピックの日本水泳陣の活躍ぶりには、日本の若い力のほとばしりを感じる。昨晩は入江選手と鈴木選手が相次いで銀メダルを獲得した。銀は若者に似合う。金ほどの財力はないが、20ドルの銀が50ドルに大化けする可能性を秘める。ホットな熱伝導性に優れ、ハイテク需要が見込める素材だ。

そして、次は金を目指し頑張るというモチベーションも高まる。円高による世代間格差を若者たちはただ座視しているわけではない。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。
 1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。チューリッヒ、NYでの豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく、独立系の立場からポジショントーク無しで、金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。
ブログは「豊島逸夫の手帖」http://www.mmc.co.jp/gold/market/toshima_t/index.html
ツイッター(http://mobile.twitter.com/search?q=jefftoshima)ではリアルタイムのマーケット情報に加えスキー、食べ物など趣味の呟きも。日経マネーでは「現場発国際経済の見方」を連載中。日本経済新聞出版社や日経BP社から著書出版。
業務窓口は jefftoshima@hyper.ocn.ne.jp

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