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大震災で役に立った地震保険 支払い実績75万件

3.11から1年・地震保険を考える(上)

東日本大震災以降、多くのメディアで取り上げられた地震保険ですが、残念ながら、内容について誤解されているケースや、間違った受け止め方をされていることが少なくありません。

誤解、杞憂の多い地震保険

昨年の震災において、地震保険は東北、関東、甲信越などで75万件以上、1兆2000億円を超える保険金が支払われました。被害が甚大だったため、震災直後には保険金が契約どおりに支払われるのか、といった声もありましたが、地震保険は「地震保険法」という法律に基づいて運営されている公共性の高い保険であり、1回の地震につき5兆5千億円(注:2012年4月1日からは6兆2000億円)までは法律によって保険金の支払いが保証されています。

また損害保険会社には保険料から一定の経費を除いた額を保険金支払いのために積み立てることが義務付けられており、保険会社には利益が生じず、積み立てられた保険料の運用にも一定の制限が設けられています。保険金支払いへの不安は仕組みを正しく理解していないためであり、杞憂(きゆう)だったといえるでしょう。

「液状化は地震保険の対象外」という声も多く聞かれましたが、これも誤解です。地震保険は建物や家財の損害を補償するものであるため、液状化で敷地に地割れが生じたといった場合は補償されませんが、建物が一定以上埋没、傾斜した場合は補償の対象となります。

東日本大震災では津波や液状化の被害が注目されましたが、内陸部でも家屋に大きな損害が生じており、仙台市内では全壊認定を受けたマンションが100棟を超えています。「津波がなければ家が倒れることはない」「古い家屋でなければ大丈夫」と感じた人も多いようですが、決してそうではありません。

家屋全壊でも住宅ローンは残る

国は持ち家は個人の私有財産であるとの考えから、マイホームの損害に対する支援は原則としてなく、地震によってマイホームが全壊した場合、公的給付としては基礎支援金の100万円、大規模半壊では50万円、これに再建方法に応じて最高200万円の加算支援金がプラスされるのみです(下図)。

住宅ローンを返済中の場合、一時的な返済猶予を受けることもできますが、ローンそのものが減額されることはありません。賃貸住宅に転居するとしても、住宅ローンの返済に家賃が加わり、「住居費の二重負担」となるわけです。この負担をどう軽減すべきか。貯蓄を増やしておくこと、借入額を抑えることも重要ですが、あわせて自助努力の手立てとなるのが、「地震保険」なのです。被災地では、「迅速な支払いで助かった」「保険金が入金されたのを知って涙が出た」といった声も多く聞かれ、未加入者との明暗を分けている印象もあります。

世界中のM6以上の地震のうち、約2割は日本列島周辺で発生しており、この国で暮らす以上、震災による経済的なダメージに備えることは必要不可欠といえます。首都直下型地震では火災のリスクも懸念されていますが、地震が原因で発生した火災は火災保険では補償されず、カバーできるのは地震保険のみ。津波や噴火も同様です。

地震保険について誤った認識をもったままではリスクヘッジの有効な手段を失うことにもなりかねません。次回は地震保険の正しい知識についてお伝えします。

清水香(しみず・かおり) 生活設計塾クルー、CFP認定者1級FP技能士。1968年東京生まれ、91年中央大卒。生損保代理店に勤務、生損保業務に携わる。2001年FPとして独立、ライフアンドマネープランニングに所属。02年、生活設計塾クルー取締役に就任。主な著書に『地震保険はこうして決めなさい』(ダイヤモンド社)『見直し以前の「いる保険」「いらない保険」の常識(講談社)』『こんな時、あなたの保険はおりるのか?』(ダイヤモンド社)など。

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