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新年の計に「世界まるごと積み立て投資」

編集委員・田村正之

 新しい年が始まった。「辰巳(たつみ)天井」という相場格言からは上昇が期待できるはずの辰年なのに、足元は欧州の財政危機や新興国の成長減速懸念などで乱高下も予想される。不透明な時代の「新年の計」の1つとして「世界まるごと積み立て投資」を考えてみる。

「おめでとうございます」

「おめでとう。でも年を取ると、新年や誕生日がそれほど嬉しくなくなるんだよね」

「そういうネガティブな思考だから、今までの人生もパッとしなかったんじゃないんですか?」

「ほっといてくれ。ところで『新年の計』って言葉、知ってる? 『計』ってのはつまり計画で、何かよいことを考え始めるのなら最初が肝心ってこと」

「なぜそれが積み立て投資?」

「今年の相場は本当に見通しづらい。米大統領選をはじめ、中国、ロシア、フランスなどで指導者交代が目白押し。過去は主要国で政権交代が多い年ってのは、選挙での支持率上昇を目指す景気対策などで世界全体でも経済の押し上げ要因になることが多かった」

「今年は駄目なの?」

「特に先進国は財政も金融も、もうろくな手立てが残っていないので、いつものセオリーがどれほど期待できるか分からない。一方で欧州危機や新興国経済の鈍化など、不安な材料は結構あるからね」

「難しい相場環境なわけですね」

「とりあえず投資を休むのももちろん選択肢。でもこれだけマネーが世界にあふれていると、急に相場に資金が流入して取り残されないとも限らない。だからこそ、時間を分散して買い続けておく選択肢もあるってこと」

「世界まるごと投資、の過去の成績はどうだったの?」

「先進国と新興国、つまり世界全体の株価の動きを総合的に表す「ACWI=all country world Index」っていう、MSCI社が算出している指数がある。グラフAはこれの2000年以降の値動き。グラフBの方は、やはり2000年以降、この指数に連動する投資信託に毎月1万円ずつ投資していった結果を算出した(コストなどは考慮せず)」

「うわ。なんか微妙。グラフAで見ると指数の動きは結局横ばい圏だし、グラフBも、それぞれの時点での累計投資額を、それぞれの時点での資産が上回ったり下回ったり……」

「『100年に1度』といわれた金融危機を経てもトントンなら、意外によいという見方の方が妥当な気もするけど」

「どんな状況でももうかることを目指したいの」

「一定額ずつ買う積み立て投資は『ドルコスト平均法』って呼ばれるけど、これは別に魔法の杖(つえ)じゃない、って前にも話したよね。結局、最後に下がっていれば、それまで積み立てた額の全体も小さくなっちゃう。金融危機で大きく下がった時期の後だと、こういう結果になってしまうんだ」

「ちょっと頼りない『一年の計』ですね」

「もっと長い期間で見てみよう。グラフCグラフDで、同じことを期間を延ばして1980年以降でやってみた。ちなみにACWIは87年からの算出なので、先進国全体の動きを示す指数『ワールド』を使っている。長期だと指数の値動きも、積み立て投資の成績も伸びてるでしょ?」

「たまたまうまくいく期間を探してきて、『ほらいいでしょ?』っていう風に見せるのは、金融商品の販売でもよくある手口のような気がする」

「そういうひねくれた性格は、変な金融商品にひっかからないために大事だよ」

「ほめてないですよね」

「期間を延ばせば成績がよくなったのはたまたまかもしれない。でも一方で、投資対象を幅広くして株式投資をした場合、長期では報われやすいってのは、セオリーでもあるんだ」

「なぜでしたっけ」

「昨年11月29日付のこのコラムで話した『赤字でない限り、減益でも株主の資産(純資産)は増える』(図E)という株式投資の大原則を思い出してほしい。そして過去の様々な実証研究で、株価は長期的には、純資産の増加するトレンドに従って上昇していくという結果が出ている」

「だから何ですか」

「特定の国の中でかなりの数の企業が赤字になるのは、今回の金融危機のような『100年に1度』とも呼ばれたような状況ではときどき起こる。でも世界全体で企業業績が赤字になって、それがずーっと続くってのは考えにくいでしょ?」

「まあ、そういわれれば」

「世界全体で見れば株主の資産は積み重なって拡大していき、やがて株価に反映されると期待できる。それこそが世界全体の株に長期で投資することの意味なんだ」

「具体的にはどうやれば?」

「グラフAで使った『ACWI』っていう指数に連動する投信は、三菱UFJ投信の『eMAXIS全世界株式インデックス』など幾つも出ている。ちなみにMSCIが算出している様々な指数は、海外株投信のベンチマーク(参考指標)に使われることが多い。違いを表Fにまとめたから参考にしてね」

「表の中の『MSCIコクサイ』って、ときどき聞くわ」

「日本を除いた先進国株式に幅広く投資できる。『eMAXIS』や住信アセットマネジメントの『STAM』、中央三井アセットマネジメントの『CMAM』、野村アセットマネジメントの『Funds-i』シリーズの中の外国株式のインデックス投信は、みんなこのMSCIコクサイに連動する」

「コクサイとかワールドとかややこしいわ」

「別途持っている日本株の重複を避けたければ『コクサイ』、特に気にしなくて先進国全体なら『ワールド』、新興国も入れたいなら『ACWI』、新興国だけなら『エマージング』って区別して考えた方がよいけど、面倒くさいかもね。世界の株に幅広く投資する投信であれば、まあ方向性は同じだと考えてもいい」

「長期で報われやすいってのが本当だとしても、変動が大きいのは嫌だな」

「確かに株が中心だと値動きが大きく、定年後など高齢者の場合はその後に取り返すのが難しくなる可能性がある。若い人でもリスクを取りづらい場合は、債券を一定程度入れたうえで世界全体に分散する手がある」

「株だけの場合との違いは?」

「これまで見ていなかった90年以降を例に眺めてみよう。グラフGは株(ACWI)を対象に90年以降積み立て投資した結果。グラフHは50%をACWI、25%ずつを外国債券と日本債券にした場合。グラフHの方が安定したでしょ?」

「ほんとだ」

「ただしこれを見て、債券を入れればいつでも成績がよくなるとは思わないでほしい。たまたま90年以降は株が乱高下する一方、金利低下基調が続いて債券価格が安定して上がった時期が長かったということ」

「長期では株の方がリターンが大きいというのがセオリーじゃありませんでしたっけ」

「普通はね。でも90年以降は必ずしもそうではなかった。資産価格の予想ってのはやっぱり難しいよ。ただし、株と債券のように値動きの異なるものを組み合わせると、全体の値動きがマイルドになるってことは通常期待してよい」

「株と債券を全部一緒に積み立て投資できる投信もあるの?」

「各資産の組み入れ比率はまちまちだけど、セゾン投信の『セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド』や住信アセットの『世界経済インデックスファンド』、野村アセットマネジメントの『マイストーリー』などたくさんあるよ。ネット証券などで調べてみるとよい。もちろん、さっき話した『eMAXIS』『STAM』『CMAM』『Funds-i』などのシリーズで、それぞれの株や債券の投信をバラバラで買って自分で組み合わせてもよい」

「今年は私、『世界まるごと積み立て投資』と、『世界まるごと婚活』の両方を成功させるわ」

「世界まるごと婚活?」

「国内にとらわれない婚活。最大のターゲットはアラブの王子よ。私はポジティブ思考なの」

「妄想体質という言葉の方が……」

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