2019年1月22日(火)

働けない 若者の危機 第6部

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働くスキル、生涯いつでも磨ける仕組みを 慶大教授・石倉洋子氏
第6部(1)インタビュー

2013/4/30 2:00
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企業が若者の働く力を育ててきた日本では、新卒時に正社員になれないとスキルが身につかず、次の職場がなかなか見つけられない。現状をどう打破すべきか。国際的な視点から人材のキャリア開発に詳しい慶応大学の石倉洋子教授に聞いた。

――非正規社員の増加など若者がスキルを磨く場が狭まっています。

「非常に危惧している。現状を放置すれば、近い将来、スキルがない人が社会にあふれ、労働市場の需給が改善しても働けない若者が生まれる恐れがある。職業人としてのスキルはやはり仕事から学ぶ面が多く、企業の役割は大きい。だが厳しい国際競争で余裕がない企業は即戦力を重視する傾向が強い。これは日本のような先進国だけでなく、新興国でも同時進行で大きな課題となっている」

――どう解決すべきでしょうか。

「生涯いつでもスキルを磨ける場をつくるべきだ。就職できなかったり職を失ったりして一度、労働市場から外れても、スキルを身につけて再び労働市場に戻っていける、そんな仕組みを社会全体でつくっていくことが欠かせない。政府と企業が協力してそういう場を提供してもいいし、大学がつくってもいい。この解決策ですべて対応できるわけではないが、1つずつ取り組んでいかなければいけない」

「職業人として基礎的なスキルをきちんと身につける場があれば、(企業に正社員として入れなかった人などでも)就職しやすくなる。東南アジアやインドでは政府と企業が協力して、若者に就職できるだけの基礎教育を施す取り組みが盛んだ。例えば、インドのソフトウエアの業界団体では、オンライン教育を提供し、業界共通の『修了証』を渡している。若者にとってはそれがあれば就職しやすくなるうえ、業界や企業の側にも競争力を引き上げられるなど利点がある」

――日本にも「ジョブカード」や公共職業訓練など既に仕組みはありますが。

「大学も含めて若者を送り出す側と、企業が求める人材のニーズが合っていない。どのようなスキルを持つ人材を育てるべきなのか、もっと具体的に大学や企業が提案し合ってもいいと思う。これからは(ジェネラリストよりも)特定のスキルを持ったテクニシャン(専門家)が一段と求められていく時代だ。さらに欧米の大学が講義をネットを通じて流すなど、オンライン教育の普及が進み、教育にかかわるコストも下がっていくだろう。こうした追い風を受けて、企業や大学、NPOなど様々な団体が、若者にスキルを磨く場を提供していってほしい」

(聞き手は鳳山太成)

 石倉洋子氏(いしくら・ようこ) 1980年バージニア大学大学院経営学修士修了。85年ハーバード大学大学院経営学博士修了、マッキンゼー入社。92年青山学院大学国際政治経済学部教授、2000年一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授、11年から現職。世界経済フォーラム(ダボス会議)では教育・スキルなどの会合に参加。

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