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日本のライバル輩出、中国で進学校の授業をのぞく

C世代記者 駆ける 第8回

日本の難関大学へ毎年、数十人単位で優秀な生徒を送り出す、東北育才外国語学校は、中国東北部の遼寧省瀋陽市にある。2010年度の進学実績は東大3人、京大13人をはじめ、阪大、名大、東北大、東工大など国立大学にそれぞれ数人ずつが合格。同年度の卒業生127人のうち71人が日本に留学した。まさにC世代のライバルとなる人材の養成機関だ。

同校は瀋陽の進学校、東北育才学校と、京都の日本語学校である関西語言学院が1998年に合弁で設立した。2002年から中学校も併設した。

中高一貫で特に語学教育に力を注ぐ。中学1年からの英語に加え、3年から第2外国語として日本語かフランス語を選び、週8コマの授業を受ける。高校2年までに日本語検定の2級取得を基本とするが3分の1の生徒は、中国の大学3~4年生が取得する1級に合格するという。

教師は中国人が中心だが日本語には3人の日本人教師も加わる。日本留学志望の高校3年生向けには卒業直前の4月から日本人教師を増やし数学、物理、化学、社会なども指導する。6月の卒業を挟み8月まで延長授業を行う。その後、日本に渡り、関西語言学院で学んだ後に日本の大学を受験する。

同校を訪れた昨年12月上旬は最低気温が氷点下20度とこの冬一番の寒さだった。すべてのものを拒絶するかのような、いて付く外の寒さとは対照的に、校内は生徒たちの活力にあふれていた。

全寮制のため、生徒たちは、早朝7時から7時半まで自習をし、始業は7時40分から。終業は日によって異なるが、夕方まで続く日もある。

スケジュールだけを聞くと、一日中、勉強漬けのようだが、生徒を飽きさせないように授業内容も工夫を凝らしている。

「今度やったら承知しないからな!」「こんなに叱られたのはこれで何度目かな」。高校1年生のある教室ではスクリーンに映し出された日本のアニメーションを見ながら、登場人物のセリフを複数の生徒が話す、いわゆる「アテレコ」を取り入れていた。役になりきる生徒もいれば、セリフをかんでしまう生徒もいるなど、授業は時に生徒たちの笑い声を交えながら進められていった。

 印象深かったのが、生徒たちの礼儀正しい態度だ。中国でも校内で生徒が先生に対してあいさつをするのは当たり前だが、見知らぬ人は無視するのが一般的だ。

ただ東北育才外国語学校では、すれ違う生徒が皆、彼らにとって目上の人物に当たる記者に対して、「ニーハオ」とあいさつをしてくれた。同校では礼儀作法も日々の生活の中で指導しているという。

「日中両国の懸け橋となる人材の育成が狙い」と同校の設立目的を葛朝鼎校長(72)は説明する。単に語学に力を入れるだけでなく、ともすれば偏見が混じりがちな日本の情報についても「現在の日本の姿を正確に理解できるように指導している」

日本の国立大医学部へ進学志望の高校3年生の女子生徒(17)は日本での進学へ向け、期待に胸を膨らます。「日本の社会の質は高く、国民は勤勉だと聞いている。(統一試験の成績で進学先がほぼ決まる)中国と異なり、自分で選べる大学の選択肢が多い。教育内容の質も高いと聞いている」と話す。

両親が子どもたちを進学させたいと思う気持ちもよく伝わってきたが、同校は誰しもが通えるわけではない。学習内容の高さだけでなく、経済的負担も高いためだ。

学費は年間約1万3000元(約16万円)。全寮制のため寮費もかかる。地元公立校に通うのであれば、中学は義務教育のため無料で、高校も数百元ですむ。このため生徒の家庭は公務員など経済的に比較的余裕のあるところが多い。

その一方で生徒や両親が日本の有力大学への進学を目指す理由のひとつには、中国では裕福な家庭とはいえ、物価の高い日本での生活を考慮に入れた選択が働いている。東大や京大などの国立大学は私学に比べ学費が安く、留学中もアルバイトがしやすい。大学に入学した後も奨学金を申請できる機会があるといった点も魅力だそうだ。

葛校長は同校の今後の目標について、「国内では一流、国際社会でも一定の影響力の持つ、優秀な人材を輩出する学校にすること」と強調する。いたずらに生徒数を増やすなど規模の拡大は追わないと明言した。

ただ日本への進学者数は、一時的に減少しそうだ。昨年3月の東日本大震災と福島第1原子力発電所事故の影響で、子供の日本行きを心配する両親が増え、日本への留学者数は10~15%減少する見込み。葛校長は「徐々に回復するだろうが、すぐには難しい」と見通しを語った。震災の影響はここでも影を落としていた。(進藤英樹)

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