2018年7月18日(水)

地の利生かし自立型発展 沖縄 アジアへの挑戦(下)

2011/10/7付
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 「こんなに上品でおいしい沖縄料理は初めて」――。9月下旬、香港の中心街にある沖縄料理店「ブリッジス」。現地企業の幹部など特別に招かれた約80人に振る舞われたのは琉球王朝料理。沖縄から航空便で取り寄せた新鮮な食材に、招待客らは舌鼓を打った。

本場の味、高評価

沖縄の歴史や文化を現地の企業幹部らに紹介した(香港の沖縄料理店「ブリッジス」)

沖縄の歴史や文化を現地の企業幹部らに紹介した(香港の沖縄料理店「ブリッジス」)

 このイベントは沖縄県と地元の外食業、ENグループ(又吉真由美社長)が共同で企画した。沖縄県出身の又吉社長が香港に初出店したのは2001年。沖縄については当時、ほとんど知られていなかったが、本物にこだわった沖縄料理や泡盛を提供し、「OKINAWA」の認知度向上に努めた。

 それから10年。今では上海、シンガポールなどアジア7都市で23店舗を展開し年商15億円、400人以上の社員を抱える。又吉社長は「沖縄の食材やもてなしの精神はアジアで十分に受け入れられる」と故郷の実力に太鼓判を押す。

 日本の最も西に位置し、本土から遠く離れた沖縄。移動・物流コストは経済活動の足かせとなってきた。しかし、アジアに目を転じれば、その地理的優位性は際立つ。

 全日本空輸が09年10月に那覇空港で稼働させた国際物流基地(沖縄貨物ハブ)。24時間発着可能な那覇を基点にアジア各都市、羽田や成田、関西国際空港を結ぶ。夜に集荷した荷物が翌朝には目的地に届くとあって、県産品の航空貨物取扱量は月平均9400キログラムと稼働前の24倍に急増した。

 こうした地の利を生かし、アジア市場に攻勢をかける沖縄企業が増えている。製塩会社、ぬちまーす(うるま市)は台湾の大手健康食品メーカーにスポーツ飲料の原料として、自社生産量の約5%にあたる年5トンを供給。菓子メーカーのナンポー通商(那覇市)はアジア各地の嗜好に応じた商品を開発、12年度には海外売上高を現在の2倍とする計画だ。

 県が新たな主力産業への育成を目指すバイオ分野でもアジアへの進出が進む。海で採取した生物から、新薬や化粧品の原料となる有効物質を探す生物資源探索のオーピーバイオファクトリー(那覇市)。沖縄で培った技術を生かし、マレーシア海域での生物採取に来年度から乗り出す。金本昭彦社長は「世界中から生物資源を集め、沖縄をバイオの有効物質の一大供給拠点に育てたい」と意気込む。

 ただ、沖縄県の経済状況は厳しい。8月の有効求人倍率は全国最低の0.26倍。1人あたりの県民所得も203万9千円(08年度)と全国最下位だ。

世界の懸け橋に

 沖縄には面積で在日米軍施設・区域の約74%が集中するため、本土では「基地依存経済」との見方が根強い。これに対し、仲井真弘多知事は「米軍関連収入は今や県民総所得の5%にすぎない」と強調、アジアの活力を取り込んだ経済発展を訴える。

 12年度からスタートする新沖縄振興計画の基本方向にも、県側の要望を踏まえて「わが国やアジアに寄与する民間主導の自立型経済の発展」が掲げられた。

 琉球王国時代、中国や朝鮮との交易で栄えた沖縄。首里城正殿に掛けられた鐘の銘文「万国津梁(しんりょう)」は「世界の懸け橋」を意味する。その精神でアジアへ飛躍する企業が相次ぐ時、島の未来が拓(ひら)かれる。

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