熊本県営路木ダムの建設「違法」、地裁判決
熊本県営路木ダム(同県天草市)の建設に反対する地元住民が、蒲島郁夫知事に事業費約20億円の返還と事業費支出の差し止めを求めた訴訟の判決で、熊本地裁は28日、ダム建設計画を「違法」と判断した。事業費返還の訴えは退けたが、判決確定までに支出義務が生じたものを除く公金の支出差し止めを命じた。
判決で片山昭人裁判長は「過去に下流域で家屋の浸水被害はなく、洪水調整施設として建設する必要はない。社会通念に照らして妥当性を欠き、知事の裁量権を逸脱した」と指摘し、過去の被害を考慮せずに作成した計画は河川法に違反するとした。
一方で「知事に故意、過失があったとはいえず、これまで支出した分の返還請求は理由がない」とした。
原告側の市川守弘弁護士は「ダム建設の必要性を正面から否定した司法判断は初めて。全国各地の同種訴訟への影響は大きいはず」と評価した。
判決によると、県は治水と水道用水の確保を目的に建設を計画。住民側は「過去に浸水被害はなく、水道需要も過大でダムは不要だ」と主張していた。県側は「1982年の豪雨で川が氾濫した。水道の需要予測も適正」と反論していた。判決は利水計画については適法とした。
ダムは昨年完成し、4月から供用開始される予定。
原告団の植村振作代表(77)は「非常に意義が大きい判決だ」と話した。蒲島知事は「判決内容を検討し、今後の対応を決めたい」とのコメントを出した。〔共同〕