2019年2月19日(火)

熊本郷土料理の馬刺し、冷凍処理で消費落ち込む

2011/10/28付
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熊本県の郷土料理として人気のある馬刺しの消費が落ち込んでいる。ユッケの食中毒事件の影響で生肉が敬遠されたことに加え、今夏から冷凍処理が求められるようになったことが追い打ちをかけた格好だ。観光客にも人気が高いだけに、安全性を保ちながらいかに消費者離れを防ぐかが問われている。

馬肉売り場では冷凍処理を示す表示も(熊本市)

馬肉売り場では冷凍処理を示す表示も(熊本市)

「冷凍した馬刺しを食べたが、生と差は分からなかった。重要な特産品なので、安全を確立しないといけない」――定例会見で蒲島郁夫県知事はこう強調した。これまで地元では生のままでの流通、販売が当たり前だった馬刺しをいったん冷凍してから提供するよう、厚生労働省の指導が強化されたからだ。

きっかけは、「住肉胞子虫」という寄生虫が原因で起こる食中毒。最近になって食中毒の原因となることが確認され、厚生労働省が6月に防止のため冷凍処理するよう通知した。この寄生虫はいったん冷凍すれば無害になるからだ。

食中毒を予防するための冷凍処理は零下20度で48時間冷凍するというもの。しかし生食になじんでいる地元では「冷凍すると味が落ちる」という意見も根強く、一度冷凍した馬刺しなら要らないという客も少なくない。「お盆の8月は年末年始に次ぐ需要期だが、例年に比べて2割くらい落ち込んだのではないか」と熊本県馬さし流通協議会は説明する。

当初は厚労省の通知が強制力を持たないこともあり、冷凍処理は十分には浸透しなかった。しかし9月に住肉胞子虫が原因の食中毒の発生が確認され、精肉店などが相次いで営業停止処分を受けた。これがきっかけになり冷凍処理の指導も強化されている。

熊本県の馬肉は国際基準を満たす工場で処理されるなど衛生管理の水準が高く、ユッケの食中毒が起きた際も基準強化は必要とされなかった。生食の習慣が根強いこともあり、県内の流通は冷蔵が前提になっている。

冷凍が多い県外にも販売するような大手業者は味を保ちながら冷凍処理する設備も持っているが、多くの精肉店や飲食店では新たな冷凍庫などを購入する必要がある。規模の小さい店舗などには資金負担も小さくはない。冷凍処理することで部位によっては変色するなどの影響もあるといい「歩留まりが悪くなると値段や量に影響する懸念もある」(馬肉料理店)。

住肉胞子虫による食中毒は症状が比較的軽く「生の馬刺しは食文化」という反発もあるが、保健所などは指導を徹底していく構え。販売側には冷凍処理しても味を楽しんでもらえるよう設備の整備などが求められる。小売店への指導だけでなく、流通段階まで含めていかに体制作りに取り組んでいくか。熊本の食文化を守っていくうえでも課題になりそうだ。(熊本支局長 小玉祥司)

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