「国際通り」進む地元離れ 沖縄復帰40年 - 日本経済新聞
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「国際通り」進む地元離れ 沖縄復帰40年

那覇市中心部を貫く「国際通り」。南国の陽光が降り注ぐ繁華街には土産物店など約600店が軒を連ね、昼夜を問わずにぎわう。年間547万人(2011年)に上る観光客が訪れる沖縄の代表的な観光スポットとして、知名度は全国区だ。

3月下旬、歩いていた20代の女性は友人と旅行中。「高校の修学旅行以来だが、豚の顔を売る(通り近くの)公設市場は面白かった」と満足げ。沖縄旅行の最後に家族とステーキ店に入った30代の男性は「那覇空港に近いから便利」と話した。

観光客人気高く

外国人の観光ツアーも大半に国際通りが組み込まれている。沖縄観光コンベンションビューローの11年度の調査によると来訪人数の多い中国、台湾、香港、韓国からの客の8~9割が訪れた。

沖縄戦の焼け跡から10年足らずでにぎわいを取り戻し、復興の象徴として「奇跡の1マイル(約1.6キロ)」と呼ばれた国際通り。衰退が目立つ全国各地の商店街と対照的に、空き店舗はほとんどない。ただ、地元の人々の見方は少し異なる。

「かつては国際通りにしかない商品があふれ、キラキラしていた。今は同じような土産物が並ぶ観光客相手の店ばかりだから全然行かない」。那覇市の30代半ばの女性は手厳しい。

1972年の日本復帰後、通りには映画館や百貨店、ファッションビル、飲食店などが並び、長く若者文化の中心地だった。だが観光客相手の土産物店や飲食店が年々増え、国際通り商店街振興組合連合会によると現在は約6割を占める。

観光客依存が増した結果、客が減る冬の売り上げは夏と比べ大きく落ち込み、01年の米同時テロ、08年のリーマン・ショック、11年の東日本大震災など外部要因による観光低迷の直撃も受けた。

「地元の人が集まらない地域に観光客が魅力を感じ続けるだろうか」。商店街振興組合連合会の役員たちも問題意識を共有する。国内観光客の多数を占める「リピーター」の足がいずれ遠のくという心配だ。

再興目指す動き

手をこまねいてはいない。07年から毎週日曜日午後、一般車両を通行止めにし、音楽や大道芸などのパフォーマンスを繰り広げている。商店街振興組合連合会事務局長の砂川正信(52)は「地元の家族連れも外国人観光客もみんなが喜ぶイベントを仕掛けていきたい」と知恵を絞る。

ヒントはある。国際通りの裏手にある繁華街「桜坂」。キャバレーなどの歓楽街として栄えたが、市中心部の人口空洞化で活気を失った。しかし、閉鎖された映画館が05年に改装オープンした頃から、周囲に若者が営むカフェやバーが集積。おしゃれな店と古いおでん屋などが混在する不思議な魅力が、地元の若者や観光客を集めている。

「旅慣れた観光客は地元の人が集まる場所に行ってみたいと思うもの。パリを旅する日本人も昔は買い物が一番の目的だったが、今は市民に人気のカフェを探し歩くでしょう」。演出家で、今は県文化観光スポーツ部長を務める平田大一(43)は話す。観光客と地元客が共存する街が関係者の願いだ。=敬称略

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