2019年2月19日(火)

オフィス、乏しい実需奪い合い 回復なるか不動産市況(下)
賃料下げ続く

2012/3/27付
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福岡市の中心市街地、天神地区から1キロメートルほど離れた九州電力本社の隣に12日、地上14階建てのオフィスビル「電気ビル共創館」が完成した。市営地下鉄の渡辺通駅に地下道で直結。全ての照明に発光ダイオード(LED)を採用することなどにより、同市が定めた建物の環境配慮格付け「CASBEE(キャスビー)福岡」でオフィスビルとして最高ランク「S」を取得した。

「満室稼働」でのスタートとはならなかった電気ビル共創館(福岡市中央区)

九州経済連合会など8つの経済団体が入居するが、一般オフィス向け7フロアのうち、入居者が決まったのは1フロアだけ。3.3平方メートル当たり1万5000円という高い賃料がネックになっている。同ビルを所有・管理する九電子会社の電気ビル(同市)でテナント誘致を担当する開発推進本部の魚返英久氏は「勝負はこれから」と話すが、利便性に勝る天神で同1万円程度のビルもあり、苦戦は免れない。

再開発でも苦戦

不動産仲介大手の三鬼商事(東京・中央)によると、天神やJR博多駅周辺など同市内ビジネス地区の2月の平均空室率は13.02%。15%台だった2010年に比べれば回復したが、東京や大阪はもちろん、名古屋や札幌より依然として高い。

「交渉でどれだけ賃料を下げられるかがテナント獲得のカギを握る」(福岡市内のオフィス仲介業者)。高い空室率を背景に価格競争がやむ気配はない。

天神などの中心市街地では築50年を超えるビルが今なお現役。一部では再開発を視野に入れた動きもあるが、「再開発しても見合った賃料が取れない」(デベロッパー)という実態が地権者らの前に立ちはだかる。電気ビル共創館の現状は、オフィス空室率が高水準の福岡市内の再開発の難しさを象徴する。

九州の他都市も厳しい状況は変わらない。熊本市では「20%程度まで上がっていた空室率は15%程度まで下がった」(地元不動産鑑定士)が、JR熊本駅前に24日、全面開業した再開発ビル「くまもと森都心」の商業施設向けフロアは一部が空いたままだ。

空き店舗増加

17日、地元の長年の悲願だった高架化が実現したJR大分駅。周辺では15年春までに大分市の複合交流施設や新駅ビルなどが次々に完成する。しかし、店舗面積が3万平方メートルを超す新駅ビルの影響を懸念し、商業地への投資は落ち込んでいる。昨年1月に大分パルコが撤退した駅前一等地のビルも、新たなテナントが見つかっていない。

鹿児島市でもJR鹿児島中央駅周辺では再開発が進んだ半面、繁華街の天文館地区は「空き店舗の増加に歯止めが掛からない」(地元不動産鑑定士)。

九州では東日本大震災後、リスク分散などを理由に東日本からオフィスを移転する動きもあった。だが、「九州でも電力不足の問題が起きると、問い合わせは一気に減った」と不動産仲介のオフィスネットワーク(福岡市)の野本寛則取締役は語る。

不動産の実需が伸びない中で、ビルを新設してもテナントが容易に見つかる保証はない。限られたパイの奪い合いの様相が一段と強まっている。

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