2019年1月21日(月)

太陽光パネル周辺部材、九州から革新の波(エネルギーを拓く)
第2部 太陽光フロンティア(4)

2011/12/23付
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産業技術総合研究所が昨年、佐賀県鳥栖市の九州センターに開設した研究拠点「太陽電池モジュール信頼性評価連携研究体」。ここで今年夏、世界最高水準の耐久性を持つ太陽光発電パネルの試作品が完成した。セ氏85度、湿度85%の環境でも、既存品に比べて5倍の5千時間、発電性能が劣化しないという。

素材メーカーの開発を支えたのは日本の公的研究機関で唯一という試作ライン。発電素子(セル)の回路を作る配線機や、セルとガラス基板を接着する封止材を真空圧着する装置などを取りそろえた。産総研が佐賀県を選んだのは「日照量が安定しており、実地試験など試作品作りに最適の立地だったから」(同センター)だ。

高機能化の余地

試作品の要となったのが新開発の封止材用樹脂。既存の封止材は、水分が付着すると酢酸を発生してセルを傷めるという課題があったが、酸を発生しない樹脂の開発に成功した。

センターの増田淳研究体長は「セル単体で性能差はつきにくいが、封止材や電極、ガラス基板など周辺部材の技術革新に努めればパネルは高機能化できる」と指摘する。

こうした周辺部材など太陽光発電の裾野分野に注目、新規事業の開拓を目指す動きが地場企業に広がっている。

パワーバンクシステム(熊本県八代市)は繊維強化プラスチック(FRP)をフィルム状太陽電池の封止材に応用、次の成長の柱に据える。もともと配電盤用などのFRP製品を生産していたが、「軽くてさびない」特長を生かし、海沿いや海面近くに設置する太陽電池向けに用途開発した。

大型受注も決まり、来年1月には最大1億円を投じ生産設備を導入。米国の太陽電池メーカーからもセルを調達、パネルメーカーへ駆け上がる。

重さ7分の1に軽減

屋根材施工の川口スチール工業(佐賀県鳥栖市)は、薄膜太陽電池と鋼板を一体化した屋根材の施工技術で需要を掘り起こす。折り曲げ自由な薄膜系に目を付け、丸みを帯びた屋根にもパネルを設置できるよう専用の金具も開発した。

結晶シリコン系パネルは架台を含め重さは1平方メートル当たり60キログラム程度。一方、鋼板一体型は約7分の1の重さで架台いらず。川口信弘社長は「設置コストの差は大きい」と商機を見込む。

行政も関連産業の裾野拡大による地域経済の振興を目指す。

リサイクル産業が集積する北九州市は三菱化学子会社の新菱(北九州市)などと組み、太陽電池のリサイクル技術の確立に取り組む。早ければ2年後にも同市のエコタウン内にパネルリサイクルの実証プラントを作る。

6月には九州経済産業局などが後ろ盾となり、パネルメーカーや施工会社など約50社が参加して「九州ソーラーネットワーク」(SONEQ、福岡市)が発足した。

「太陽光発電をパッケージ化して提供する付加価値の高いビジネスモデルを確立する」(事務局の九州経済調査協会)のが目標だ。ただ、取り扱う分野はパネル開発から故障診断まで総花的な感はぬぐえず、九州の関連企業が一体となれるのか知恵が求められる。

九州発の技術やビジネスモデルを通して太陽光発電という産業をどこまで深化させられるか。業種の垣根を越えて技術を集め、システム全体で挑む発想が欠かせない。=第2部おわり

(上阪欣史、菊池貴之)

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