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福岡産真珠、常識を覆す外海養殖 13年商品化へ

福岡県産真珠の商品化が近づいている。宝飾品大手のミキモト(東京・中央)が玄界灘に浮かぶ相島(あいのしま、同県新宮町)で真珠養殖を始めてから5年。生産量は順調に増え、大玉が多いなど品質も高い。同社はこれまで備蓄してきた相島の真珠を使った宝飾品の販売を2013年に始める計画だ。福岡県は新たな県産品の誕生に期待を寄せている。

大半が直径8ミリ以上の大玉

ミキモト子会社のミキモト博多真珠養殖(同町)は毎年1月、相島沿岸の養殖場でアコヤ貝を海中から引き揚げ、真珠を取り出す「浜揚げ」と呼ぶ作業を実施。今年も同作業をこのほど終えた。

養殖場の近くの建物で作業員が貝を開き、身と殻を分けていく。身をミキサーのような装置に入れ、身の中の真珠を取り出す。真珠は直径8ミリメートル以上が大玉とされ、相島の真珠は大半が大玉だ。

相島での真珠養殖の歴史は浅い。相島にはもともとアコヤ貝が生息しており、福岡県が活用法を探ろうと九州大学に相談したところ、九州大は三重県で真珠養殖を手掛けるミキモトを紹介。01年に相島での真珠養殖に関する3者の共同研究が始まった。

真珠は三重県や長崎県などの内湾が主産地。潮流が速いと、餌となるプランクトンが流されてしまう。さらに、波が高いと貝は殻を閉じ、餌を取ろうとせず成長しにくい。穏やかな内湾が真珠養殖に適している理由はここにある。

相島は外海の玄界灘にあり、冬場には北西からの強い風が吹く。ミキモト博多真珠養殖の永井清仁養殖場長は「当初はこんなところで養殖ができるのか疑問だった。真珠養殖業界の常識が覆された」と感慨深げに語る。

研究を進めるうちに、相島が防風壁の役割を果たし、養殖場所の波はそれほど高くならないことが判明。南側の博多湾からプランクトンが海流に乗り、大量に流れてくることも分かった。養殖が可能と判断したミキモトはミキモト博多真珠養殖を07年1月に設立し、養殖に乗り出した。

ミキモト、収益向上や品ぞろえ拡充に期待

初めて浜揚げをした08年の真珠の採取量は約8000個。5年目の今年は約13万個に達した。相島のアコヤ貝は大きく育つ傾向があり、真珠が大玉になりやすい。病気や赤潮の発生もなく、長期間育成できるため、「きめ細かい真珠の層ができて輝きが増す」(永井氏)という。

ミキモトが持つ三重県の養殖場と比べ、相島の生産規模は4分の1~5分の1にとどまる。しかし、高品質の真珠は収益向上や品ぞろえの拡充につながるため、相島への期待は高い。

代表的な真珠宝飾品であるネックレスは、大きさや色をそろえた真珠を用意する必要があり、商品化には一定量の確保が欠かせない。このため相島の真珠は現在、一定量に達するまで備蓄している状況で、13年に商品化にこぎ着ける予定。ミキモトは品質の高さを生かし、高級宝飾品として売り出す計画だ。

相島の養殖場は「福岡県で唯一の真珠養殖場」(福岡県農林水産部)で、商品化されれば新たな県産品となる。同県は発売を見越して知名度向上策に知恵を絞り、アコヤ貝の貝柱を使った加工食品の開発も新宮町と共同で検討中だ。福岡県産真珠が新たな地域資源として輝きを放とうとしている。

(西部支社 黒井将人)

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