医療軸に国際戦略特区 近畿3府県・政令市が申請へ
京都、大阪、兵庫の3府県と京都、大阪、神戸の3政令市は「関西イノベーション国際戦略総合特区」を30日までに共同申請する。関西地域が強みを持つ医薬、医療機器、バッテリー(蓄電池)など6つの分野で、特区制度を活用。海外への拠点流出に歯止めをかけ、新技術の実用化や産業集積を目指す。28日に設立した関西経済連合会など経済団体、企業、大学などを交えた地域協議会で同特区の計画を推進する。
重点的に取り組むテーマは医療分野では医薬品、医療機器、先端医療技術、先制医療。京都大学、大阪大学、神戸大学などが中心となり、各研究機関が持つ先端技術の実用化に向けた産学官の取り組みを主な対象とする。臨床試験のデータを治験段階で活用できる制度をつくり、研究成果の実用化を促す。
エネルギー分野では、バッテリーと地域の多様な電源を制御する「スマートコミュニティー」に重点的に取り組む。バッテリーは大阪市の夢洲・咲洲地区が中心で、性能や安全性評価、関連機器やシステムの認証などを担う「バッテリー戦略研究センター」を設置。同分野の研究開発型の生産拠点の誘致につなげる。
同地区では夢洲で計画されている大規模太陽光発電やゴミ発電などを含めた多様な電源を制御して立地企業や施設に安定供給するスマートコミュニティーの実証実験を進める。各構成機器の開発に役立てるとともに、システム全体の海外受注にもつなげる。
このほかスマートコミュニティーの実証実験としては、けいはんな学研都市を中心にしたエリアで、閉館した職業体験施設「私のしごと館」を拠点にすることを検討。また、東芝の大阪府茨木市の自社工場跡地も対象とする。
医療分野やバッテリーの材料開発では次世代スーパーコンピューター「京」や大型放射光施設「SPring-8(スプリング・エイト)」の活用なども盛り込んだ。医薬品の輸出入の際の温度管理や医療機器輸出入手続きの電子化など、関西国際空港、阪神港をイノベーションを支える基盤の強化対象として位置付けている。政府は総合特区の申請を9月末まで受け付け、年内に指定する見通し。
地域協議会の代表に就任した森詳介・関西経済連合会会長は「関西は際立った力を持つ集合体。産官学が一枚岩となれば他地域がまねできない力を発揮する。関西が持つ世界に誇れる組織・団体を結集し、新しい産業の創出を図っていく時だ」と語った。
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