2019年2月19日(火)

製材工場、森を活性化 四国の林業 再生への道(下)

2012/2/23付
保存
共有
印刷
その他

四国山地の中央に位置する高知県大豊町で来年5月、中四国最大の製材工場が操業を始める。

大手集成材メーカーの銘建工業(岡山県真庭市)が58%を出資、大豊町や高知県森林組合連合会などと設立した第三セクター「高知おおとよ製材」は当初、原木換算で年間5万立方メートル製材し、3年後に年間10万立方メートルまで増やす計画だ。

工場を誘致した大豊町の岩崎憲郎町長は「森の資源と消費地をつなぐパイプになる。大きな流通のもとで山のあり方を変えたい」と語る。

■エンジンの役割

高知県は、新製材工場が年間10万立方メートルを加工するようになれば、山では約20万立方メートルの伐採が必要になると試算。現状で年間40万4000立方メートルの県の年間原木生産量を、4年後に1.5倍に増やす目標を掲げる。

尾崎正直知事は「新工場は木を加工し外に出していく大きなエンジン」と森林資源の活用を増やす拠点にする考えだ。

戦後に植林したスギ、ヒノキが50年を超えて伐採期を迎え、林業再生の好機にある。国は2009年に策定した「森林・林業再生プラン」で林業を成長分野と位置付け、森林整備から森林資源の活用へと施策をシフトさせた。国内木材供給量を20年には09年の2倍以上に、国内自給率も30%弱から50%に引き上げる。

昨年2月、大型製材工場を本格稼働した八幡浜官材協同組合(愛媛県大洲市)は早くも目標にしていた年間6万立方メートルの生産ペースに乗り、「首都圏を中心に住宅会社やプレカット大手など新規の取引先が増えた」(菊池正代表理事)。ヒノキで国内最大級の製材加工拠点として地元の製材5社が工場を1カ所に集約したが、大型需要に地元の供給体制が追いつかない課題が浮上。九州からの調達が増えた。

香美森林組合はオーストリア製の集材機械「タワーヤーダー」を導入した(高知県香美市)

香美森林組合はオーストリア製の集材機械「タワーヤーダー」を導入した(高知県香美市)

原木の安定供給懸念は、大豊町の新工場でも同じ。地元でスギやヒノキを切り出す「とされいほく」の半田州甫副社長は「求められる供給量が大きすぎる。一挙に増やして対応できる労働力は現場にない」と嘆く。

高知県は新工場の稼働を機に間伐だけでなく、樹齢に応じ対象区画の樹木をすべて切る「皆伐」を促す方針。12年度予算は皆伐後の再造林への補助金を上積みし、シカなどの食害対策も講じる。

樹齢40~50年前後の皆伐は再造林の経費が膨らむが、再生プランは作業道を整え、高性能作業機械の導入でコストを減らすことを打ち出した。

高知県香美市の香美森林組合は09年度に全国5地区の再生プラン実践事業に選ばれ、一足先に新しい林業のモデル構築に取り組んでいる。同組合が導入したオーストリア製の集材機は、作業道から400メートルの範囲で木材を集められる。100メートル以内が限界だった、従来の集材機に比べ集材範囲が大幅に広がった。

オペレーターが無線で操作するので人員も減らせる。集材範囲が広がれば、作業道も少なくて済み、道の開設費などを削減できる。生産性は1.5~2倍に高まった。

■安定供給がカギ

内閣審議官として再生プランを策定した富士通総研経済研究所の梶山恵司主任研究員は「日本には60億立方メートルの森林蓄積があり、林業先進国のドイツの2倍。『宝の山』を生かす絶好のチャンス」と語る。

梶山氏は「プランは林業再生へ最低限の処方箋。生産性や効率性、安定供給をうたうのは、森林を適切に維持管理するには経営的な視点が不可欠だからだ」と強調する。

四国の森林は全国の森林蓄積の約7%。8割が人工林で、森林資源には膨大な可能性がある。木材関連産業は裾野が広く、安定した木材生産体制を構築できれば疲弊する地域経済の大きな希望になる。改革の芽を育て、豊かな資源を次世代につなぐことができるのか、分岐点に立っている。

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報