2019年3月20日(水)

能登で動き出す里山ビジネス ブランド構築へ

2011/8/12付
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国連食糧農業機関(FAO)は6月、次世代に継承すべき農業システムや生物多様性を有する地域「世界農業遺産(GIAHS)」に、先進国で初めて石川県の能登4市4町の身近な自然「里山里海」を認定した。過疎化と産業空洞化に直面してきた能登の里山里海を舞台に、GIAHSによる地域ブランドの構築と、新たなビジネスの創出が動き出した。

日本海に突き出た能登半島の最北端、石川県珠洲市。GIAHSの認定を受けた同市は、9月補正予算で500万円を計上し、GIAHSにふさわしい農林水産業や地域文化、生物多様性の本格的な調査に着手する。「自然と共生する珠洲市を地域としてブランド化したい」。泉谷満寿裕市長の狙いだ。

珠洲市では地元住民による取り組みが動き出した。GIAHS認定を地域振興に生かそうと、炭焼き職人や在来種「大浜大豆」の農家、民宿経営者、金沢大学の研究者ら約20人が集まり、検討会議「チャレンジワーキング」を2回開催。ここで「GIAHSプレミアムを生かす土台づくりは、しっかりした調査から」との考えで一致した。

総額53億円組成

石川県も支援する姿勢を打ち出す。県と地域金融機関は5月、里山里海ビジネスの創出を支援する目的で、総額53億円の「いしかわ里山創成ファンド」を組成した。

利率1.3%の県債に投資して年間4500万円の運用益を、里山ビジネスの成功モデルになり得る公募事業者に補助金として支給する。上限は200万円、補助率は4分の3とした。

県は4月の組織改正で支援の専門部署となる里山創成室を設置。同室はファンドの公募窓口も担当する。ファンドに対する事業者や県内市町の関心は予想以上に高く、公募説明会は急きょ開催地を増やしたほどだ。

里山創成室の越島誠室長は「『業』として『億』単位になる事業を選びたい」と、雇用を創出できるビジネスに照準を合わせる。

北陸農政局長として能登のGIAHS認定の実務にかかわった農林水産省の角田豊官房審議官は「世界的に注目されれば、『自分の代までで……』とあきらめムードだった農家の意識が変わり、篤農家に農地を預けることで、規模拡大につながるのではないか」と指摘する。

時間と労力必要

もっとも、FAOが高く評価した里山の景観を支えてきた能登4市4町の農業は将来展望が描けない危機に直面している。1995年に2291ヘクタールだった耕作放棄地は2010年には4116ヘクタールに増え、この間、東京ドームに換算して390個分の田畑が消えた。30アール以上を耕す「販売農家」は8570戸あるが、このうち78%は年間収入が100万円に満たない。

里山創成ファンドは5年間の運用期間で将来有望な里山ビジネスの芽を出したい考え。だが、1次産業は自然が相手だけに、ビジネスとして成立させるには相当な時間と労力がかかる。

珠洲市のチャレンジワーキングのあるメンバーは「景観や伝統文化は時代に遅れたために、かろうじて残っただけ。あせってGIAHSを商売の付加価値にしようとすれば、薄っぺらになる」と、地域で共有できる長期ビジョンの重要性も訴えている。

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