お堅い法律 まーるく解説 長寿番組が開いた道(3)
軌跡
演芸番組か、それとも法律番組か――。身近なもめごとを笑いにくるめ、お堅い法律にのっとって柔らかく説く。土曜昼放送のNHK「バラエティー生活笑百科」は、エンターテインメント仕立ての法律相談番組の先がけだ。
NHK大阪放送局の制作で、1985年開始。初めは司会(番組では相談室長との設定)が西川きよしさんだったが、1年後、参院選出馬のため笑福亭仁鶴さんに交代し、以来28年続いている。
漫才コンビがもめ事の子細を語り、是非を問う。それに対し、吉本新喜劇の辻本茂雄さんら2人の相談員が意見を述べ、最後に弁護士が専門的見解を下すという構成だ。
深刻になりがちなもめ事も、笑いに救われる。入念な台本と出演者の話芸のおかげだろう。台本はスタッフが収集した判例をもとに、構成作家が専門家と相談しながらじっくり練りあげる。
「笑いも立派な文化のひとつ。そんな大阪ならではの気概が、娯楽仕立ての法律番組を誕生させた」と仁鶴さんは分析する。
世相を映して、海外旅行でのトラブル、孫への遺産相続など、扱う案件も変容してきた。法律相談を人ごとでなく、身近な問題としてお茶の間に引き寄せた功績は大きい。
相談が枯れてしまう懸念は無いのか。「判例は無数にあるし、似た案件でさえ解釈次第で是非がひっくり返る。台本もまだまだ書けるはず」と担当の石沢直樹チーフ・プロデューサーはみている。